2005年12月15日(木)「しんぶん赤旗」
「偽装わかると思った」
“イー社 図面見てない”
姉歯氏喚問
専門家「形式的チェックに問題」
耐震強度偽装の手口・方法、理由と背景、そして耐震強度偽装のシステムは誰がどのようにしてつくりあげたのか―。十四日、衆院国土交通委員会での証人喚問で浮かび上がってきたものは…。
■「木村」の圧力
「木村建設の篠塚明元東京支店長からのプレッシャーがきっかけだった」。証人として宣誓した姉歯秀次元建築士は偽装のきっかけと手口をくわしく証言しました。
姉歯氏が構造計算書を最初に偽造したのは一九九八年。東京・大田区のマンション「グランドステージ池上」の建設でした。篠塚氏とは数年前から仕事仲間として物件を手がけていた間柄。篠塚氏は姉歯氏にこう迫りました。
「鉄筋量が多い。これじゃ予算が合わないから減らしてくれ」。そして「(鉄筋の)一覧表を見せられ、八十―百キロを六十キロと具体的な数字も提示された」と“圧力”の実態をくわしく証言しました。
「違法してでもと感じたか」との質問に、「これ以上はできないといっていたのでそう感じた」とのべました。
一方、篠塚元支店長は「コストを抑えるのが私の役割。経済設計はいったかもしれないが、偽装には一切関与していない。強く圧力をかけた認識はない」と否定。しかし営業経費として、姉歯元建築士に七回にわたり、「ダミーの請求書を使って」計二百二十万円を請求していたことを認めました。
■通りやすい
証言で浮かび上がったもう一つの問題が民間検査機関のずさんな建築確認でした。
偽装の手口は重量を低減し総重量を抑えたり、地震時の力を通常「1・0」とするところを「0・5」などと入力するやり方。そのノウハウは「独自で考え出した」(姉歯氏)ものでした。
「構造のプロであればすぐ偽装はわかると思った」。こう何度も繰り返し証言した姉歯氏。
二〇〇三年以降、姉歯氏がかかわった偽装物件を主に検査していたのは民間検査機関の「イーホームズ」。その件数は三十一件に及び、偽装件数の半数近くを占めています。
そのイー社について姉歯氏は「(同じ民間機関の)日本ERIと比べ、明らかにイー社は(検査が)通りやすかった」と証言。そして「イー社は書類や図面を見ていないのではないか」と証言しました。
日本建築構造設計事務所協会連合会の永谷芳郎事務局長は「民間会社は建築士は偽装をやらないという前提で図面などをみているということだ。書類さえ整っていれば形式的なチェックで通ってしまう今の民間の問題点が明らかになったといえる」といいます。
■疑惑の三角形
「私一人でできることではない」。偽装問題の責任の所在を問われ、こう証言した姉歯氏。この日の証人喚問でホテル建設をめぐって姉歯氏、総合経営研究所(総研)、木村建設(平成設計)の三つを結ぶ疑惑の構図が浮かび上がりました。
総研は全国のホテルの建設・開業指導を行っているコンサルタント会社。「低価格」を売り物にした木村建設とは「三十年来の付き合い」(木村盛好・木村建設社長)。総研の内河健所長から経営指導を仰いできました。木村建設の木村盛好社長は「平成設計の業務は100%総研の仕事で、指導も100%受けている」と総研との密接な関係を認めました。
奈良県のホテルの物件では総研が経営指導し、木村建設、平成設計などから仲介手数料などの名目で総額二千三百万円が木村建設グループから総研に流れるなど、資金をめぐる不透明な関係も浮上。「この日の証言で総研を頂点としての疑惑の構図と責任が明らかになった」(喚問終了後の日本共産党の穀田恵二国対委員長の会見)のです。