2005年12月15日(木)「しんぶん赤旗」

主張

防衛「省」昇格

権限拡大は軍事大国化を加速


 政府は、来年の通常国会に防衛庁を「省」にする法案を提出する方針を固めました。自民・公明両党の幹事長・政調会長会談での合意を受けたものです。

 防衛庁を「省」に昇格させることは、たんなる“看板の書き換え”ではありません。

■憲法と相いれず

 防衛庁は、省(国家行政組織法の「行政事務をつかさどる機関」)である内閣府の外局(直属機関だが、独立性をもつ)です。内閣府の外局としては他に、金融庁、国家公安委員会(警察の元締め)、公正取引委員会があり、防衛庁と同格です。

 内閣府の「主任の大臣」は、総理大臣であり、防衛庁長官は、法律制定のため閣議開催を求めることや政令の発布、財務省に予算要求する場合も、直接には実施できず、総理大臣を通さなければなりません。

 防衛庁を「省」とせず、このような仕組みにしているのには理由があります。

 最大の理由は、軍部の暴走を許した侵略戦争の反省にたって、憲法が、戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認を決めていることです。陸・海軍省の復活は絶対に許されません。

 政府は、自衛隊を「戦力」ではない、「自衛のための実力組織」だといって、違憲性をごまかしてきました。この見解との整合性をはかるには、独立した省ではなく、防衛「庁」にとどめざるをえませんでした。

 だから、一九六〇年、岸首相(当時)も、太平洋戦争開戦時の東条内閣で商工大臣をつとめた政治家ですが、「戦後の新憲法のもとにおける防衛というものは、旧憲法のときの軍部、陸海軍とかその他のような立場を絶対にとらしてはならない。国防省という考え方が、(権力肥大化の)懸念も伴うおそれもありますから、軽々にきめるべきではない」(六〇年五月十六日衆院内閣委員会)と答弁しています。「憲法そのほかの関係から見て、総理大臣の直属の庁にしておいた方が適切」(八六年十二月九日参院内閣委員会 中曽根首相)という答弁もあります。

 ところが、小泉首相は、「むしろ今までの方がおかしい」(六日)と、歴代内閣の姿勢を批判し、歴史も憲法も無視する態度をとっています。憲法を改悪して「自衛軍を保持」し、海外で戦争もできるようにする狙いと、防衛「省」昇格は一体のものです。憲法の武力行使禁止の歯止めをとりはずすのに先立って、防衛庁についてまわる“制約”を取り払い、戦争指導体制を整備・強化しようとしているのです。

 小泉政権は、アメリカの先制攻撃戦略に従い、世界各地の紛争への介入態勢づくりを約束しました。陸・海・空三自衛隊を一体的に動かす統合運用を来年三月から開始するのもその一環です。さらに、基地の日米共同使用や日米共同訓練の強化などで軍事一体化を進めようとしています。防衛「省」への昇格は、こうした日米軍事機能の一体化=「同化」を加速させるものであり、戦争の危険を大きくします。

■米追従はアジアで孤立

 憲法は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」しています。防衛「省」化は、アメリカに追随して軍事力で海外にのり出そうとする「政府の行為」です。小泉首相の靖国神社参拝とあわせ、侵略戦争の反省表明に背く態度は、アジアの反発を広げ、孤立化を深めます。

 憲法を基礎にアジア諸国とともに平和の大道を進むべきです。


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