2005年12月14日(水)「しんぶん赤旗」

主張

大量誤発注

空売りと株高の狂騒の陰で


 東京証券取引所で発生した大量誤発注で株式市場が混乱しています。

 「みずほ証券」が新規上場企業の発行済み株式数の四十倍を超える売り注文を出し、東証が受け付け、取引が成立してしまいました。

 いわゆる「空売り」は、売り手が証券会社などから実際に株式を借りて売却し、株価が十分値下がりしたところで買い戻して売値との差額を得る投機的取引のことです。

 今回の場合は、存在するはずのない何十倍もの株式が市場で売買されました。文字通りの「空売り」がまかりとおる異常事態です。

■一般投資家ないがしろ

 発端は「みずほ証券」の誤発注です。しかし東証が、ありえない大量の誤発注を受け付け、誤発注に気付いた「みずほ証券」が発注を取り消そうとしてもできなかった事実は重大です。日本の資本市場を支え、国際市場の一翼を担う東証のシステムに大きな不信が広がっています。

 「みずほ証券」は当初、誤発注の発生を大株主だけに伝え、一般投資家が知らされたのは当日の取引が終わってからでした。東証は午前中に異常事態の発生を知りながら放置し、午後も取引を続けました。

 東証、証券会社の双方が一般投資家を混乱の中に放置し、ないがしろにしていたことが露呈しました。

 誤発注と分かっていたにもかかわらず、モルガン・スタンレーや日興コーディアルなど内外の証券会社が当該株を大量に買っていました。各社とも億単位の利益をせしめようとしています。「もうかりさえすればなりふり構わない」やり方が証券市場の闇を深くしていることを、市場の当事者は自覚すべきです。

 折しも東証株価が急上昇し、経済紙が「株は生き返った」と歓喜の声を上げていたときです。与謝野金融・経済財政相は「日本経済が踊り場を脱しつつあるという認識を投資家が持ち始めている」と、「景気回復」を強調していました。

 「景気回復」と言いますが、経済全体から見れば一部の大企業・大銀行が大もうけしているだけです。サラリーマンの給与は六年連続で減り続け、二十一兆円のマイナスとなっています。小泉「構造改革」は、企業が家計から所得を吸い上げる手助けをしたにすぎません。

 日銀調査によると大企業の景況感は頭打ちで、先行き後退を予測する業界が増えています。こういう時期に株価が急上昇したことは、株高が企業業績からもかけ離れていることを示しています。

 株価の上昇は日本だけで起きている現象ではありません。大和総研の調査によると、世界各国の株価が大幅に値上がりしています。

 日本と欧米の金融緩和で世界的な「金余り」が起き、原油高騰で潤ったオイルマネーがあふれています。株価の急上昇は“景気回復の結果”というより、日本市場に内外の投機資金が流れ込んできた結果です。

■市場の足元を見直せ

 減税や規制緩和で政府が株式投資を奨励し、財界中枢が、市場の規律を踏み荒らして大もうけを上げる投資家たちの後ろ盾になっています。市場の表裏でアメリカの投機筋が、巨額の利益を手にしています。

 テレビや雑誌がインターネットを使った株取引の成功談を紹介して投資熱をあおっていますが、多少とも利益を出している人は一部にすぎず、大半は損失を抱えているのが実態です。ぼろもうけの裏側で、一般投資家は踏みつけにされています。

 誤発注問題は、市場と経済の足元を見直せという警鐘です。


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