2005年12月11日(日)「しんぶん赤旗」
近づく第24回党大会
情勢の中で 決議案を読む
「官から民」路線の下で…
日本共産党は、第二十四回大会(来年一月十一日―十四日、静岡県熱海市)にむけた大会決議案を発表し、いま全党で討議を続けています。決議案に盛り込まれた内容はいま動いている情勢の特徴を根本からつかむうえで大きな力になるものです。情勢の焦点になっている問題を決議案の内容からシリーズで解明していきます。一回目は、耐震強度偽装問題です。
■耐震強度偽装
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「官から民へ」の「構造改革」路線は、建築行政のうえではすでに一九九八年六月の建築基準法改悪でレールがしかれました。
小泉内閣の内閣府が今年十月に発行したパンフレットでは、この建築基準法改定をふくめて「現在まで十年間に、のべ6000項目を超える規制緩和(改革)事項が実現しました」と“成果”を誇っています。しかし、建築基準法改悪によってできた現在の建築確認制度などが、いま大きな問題になっているのです。
改悪では、それまで自治体がおこなっていた建築確認・検査を株式会社をふくめた民間に開放しました。
■民間会社に丸投げ
建築確認とは、建築物が建築基準法の規定にそって設計、計画されているかどうかなどをチェックするもの。それまでも自治体による建築確認では建築主事が足りないなどの問題が出ていました。そのなかで政府は自治体の役割をしっかり果たす方向ではなく、「民間開放」と称して民間会社に丸投げし、自治体の役割と関与を極力減らしてしまう道をとったのです。
民間の確認検査機関は現在までに百二十二に達し、建築確認件数ではすでに自治体を上回りました。そのなかにはゼネコンや住宅関連メーカーなど建築する側の企業が出資したり、社員を出向させたりした機関が数多くふくまれています。いわば“仲間同士”で申請し、確認をおろしているようなものです。
■判決「行政も責任」
民間検査機関がおこなった建築確認は、建築基準法で自治体に報告しなければならないことになっています。しかし、その報告は四ページ程度のもの。いま偽造が問題になっている構造計算書はもとより、設計図さえ添付しなくていいことになっています。それでも、最高裁はことし六月、民間検査機関の建築確認で行政にも責任があると決定しました。
「設計図もみない制度なのに責任だけとらされるのか」という不満が自治体担当者に広がるのは当然です。自治体の検査にも耐震偽装を見ぬけなかった事例がありました。自治体側の体制を強化する方向で解決していく課題です。
北側国交相も今では、民間検査機関にたいする自治体側の責任について「権限が行使できる仕組みを検討すべき」とのべるようになりました。
■98年から問題指摘
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日本共産党は建築基準法が改定された一九九八年の国会でも、大会決議案が指摘する角度からすでに問題を指摘してきました。
当時の中島武敏衆院議員は、営利目的の民間確認検査機関で「競争が激しくなった結果、安かろう悪かろうという検査になりはしないか」(一九九八年五月十五日、衆院建設委員会)と指摘。緒方靖夫参院議員も「(民間機関に)検査をまかせ、検査結果について行政がチェックする仕組みもない制度では検査にたいする信頼性を確保できません」(参院同委員会)と批判しました。改悪にたいし、自民・民主・公明・社民・自由・新党さきがけなどが賛成、反対したのは日本共産党だけでした。
■日弁連も警告
大会決議案が提起する日本共産党の立場は、いま広く主張されるようになっています。
日本弁護士連合会(日弁連)は偽装事件後の二日、会長声明を発表。「『建築確認・検査の民間開放』を推進し、虚偽の構造計算書を見逃す事態を許した国にも責任の一端があるといわざるを得ない」と政府を批判しました。日弁連は一九九八年の建築基準法改悪のさいにも「営利を追求する株式会社が『公正中立』な立場を保持できるとは到底考えられない」としてきました。
インターネット上には、怒りの声があふれます。ある掲示板では、「民営化とはいったい何なのか」と怒り、前出の緒方議員の国会発言を引用して「緒方靖夫氏の反対討論は今日の事態を予言しているように聞こえる」という書き込みが。
七日のテレビ朝日「スーパーモーニング」では、「これは国の制度に根本があるわけです。『官から民へ』ということで、そういう機関(民間検査機関)ができたわけです。そこがいいかげんなことをした」(エッセイストの見城美枝子さん)などと指摘されています。
欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事長の吉岡和弘弁護士は四日放送のNHK「日曜討論」で指摘しました。
「検査という業務が、営利を目的とする会社になじむかという根本的な問題があります。きびしく検査をすればするだけ、お客さんは逃げていく。注文が来なくなってしまう現実があるわけです。最終的には行政がしっかり監督する体制をキープしておかなければならない」
こうした一連の指摘が広がっていることにも大会決議案の力が示されています。
■大会決議案から
日本共産党第二十四回大会決議案は、耐震偽造問題の背景になっている「官から民へ」の「規制緩和万能」論などの路線について、次のように指摘しています。
「小泉内閣が、『構造改革』としてすすめてきた『新自由主義』の経済路線――大企業の利潤追求を最優先にし、規制緩和万能、市場原理主義、弱肉強食をすすめる経済路線は、日本経済と国民生活の矛盾をあらゆる分野で深刻にしている」(第一章「自民党政治の異常な特質と、日本改革の方針」のなかの「(4)極端な大企業中心主義の異常をただす、経済的民主主義の改革」)
そして、この問題でのたたかいを呼びかけています。
「国民に苦難をおしつけるための、誤った考え方を打ち破る…『構造改革』を国民に無理やりおしつけるために、さまざまな誤った考え方――『官から民へ』『小さな政府』『公務員の既得権益打破』などが広く流布されている」
「『構造改革』の考え方に共通するのは、国民の中に『対立』をつくり『分断』をはかることである」
「こうした国民分断の攻撃にたいして、社会的連帯を大きくおしだし、その立場に立った反撃とたたかいをすすめることが重要である」