2005年12月10日(土)「しんぶん赤旗」
東京・立川市のビラ配布事件
逆転有罪の判決
東京高裁 「表現の自由」を軽視
東京・立川市の自衛隊官舎にイラク派兵反対のビラを配り、住居侵入の罪に問われた市民団体「立川自衛隊監視テント村」のメンバー三人に対し、東京高裁(中川武隆裁判長)は九日、無罪とした一審判決を破棄し、十万―二十万円の罰金刑を言い渡しました。ビラ配布は「憲法が保障する政治的表現活動」で「民主主義社会の根幹」と位置づけ、「刑事罰に値する違法性はない」とした一審判決の論点をいっさい無視する内容に、強い批判の声がでています。
被告側は「政治活動、市民運動にとってポスティング(ビラ配布)は重要な情報伝達手段。政権に批判的な主張だけが弾圧されたことは明らかだ」とする声明を発表。同日上告しました。
この事件で、昨年十二月の東京地裁八王子支部判決は、商業ビラが投かんされていたことや、ビラの内容、配布の態様などを詳細に検討。「プライバシー侵害の程度は相当に低い」などと認定し、「ビラの投函は、表現の自由が保障する政治的表現活動の一態様で、民主主義社会の根幹をなす。商業的宣伝ビラと比べて優越的地位が認められている」として無罪を言い渡していました。
この日の判決で中川裁判長は「ビラによる政治的意見の表明が言論の自由により保障されるとしても、管理権者の意思に反して建造物などに立ち入ってよいということにはならない」などと指摘。管理権者の自衛隊が立ち入り禁止の掲示を出すなどの対応をした後も敷地に立ち入ったことを挙げて「一審判決は法益侵害は極めて軽微とするが、是認できない」とのべました。
一審判決は、反戦ビラと同様に商業ビラなども投かんされていたことや、警察、自衛隊から「テント村」側に警告がなかったことなど実態をくわしく検討したうえで判断しましたが、控訴審ではこうした点は無視しています。
一審が「いきなり検挙して刑事責任に問うことは、(表現の自由を定めた)憲法二一条一項に照らして疑問の余地なしとしない」と批判した公安警察の手法にも言及しませんでした。
■被告らが批判
立川・自衛隊官舎ビラ配布事件で東京高裁から有罪判決を言い渡された被告三人や弁護団の栗山れい子弁護士らは九日、東京・霞が関で記者会見しました。
大洞俊之さんは「商業チラシ、宗教などの勧誘やセールスマンも入っているのに、なぜ我々だけ罪にされるのか」と判決を強く批判。大西章寛さんは「事件を知った多くの人は『チラシを配ってなぜ逮捕か』という」と語り、引き続きたたかう決意を表明しました。
高田幸美さんは「各地のポスティングをする人が同じ思いをさせられることになる。日本の民主主義にとどめをさしてしまうことにつながりかねない」と語りました。