2005年12月10日(土)「しんぶん赤旗」
追及 米軍再編
岩国基地増強現行2400億円から大幅増
日本の負担膨大に
根拠ない「思いやり」
■名護の新基地に
一面所報のように、米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)に代わる米海兵隊キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)への新基地建設も、莫大(ばくだい)な経費が見込まれます。
政府の試算によると、従来の名護市辺野古沖建設案の場合、埋め立て工事だけで約三千三百億円。これには、滑走路や格納庫、兵舎など諸施設の建設費用は含まれていません。
米国防総省の「基地構造報告書二〇〇五年版」によると、普天間基地には約二百五十棟の建物があります。これらの代替施設が新基地に建設されることになります。さらに新基地はキャンプ・シュワブにまたがって建設されるため、同基地の既存施設二十―三十棟の移転が必要とみられ、その費用もかかります。
■空中給油機の鹿屋移転でも
KC130空中給油機十二機の海上自衛隊鹿屋(かのや)基地(鹿児島県)への移転など、普天間基地の機能を本土に移転するのにかかる費用もあります。
「中間報告」は、鹿屋基地における「必要な施設の整備」を明記。同機の運用部隊は約三百人にのぼり、住宅なども必要になるとみられます。緊急時(戦時)に航空自衛隊築城(ついき)基地(福岡県)、新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県)を米軍が使用するための「運用施設」の「整備」も盛り込まれています。
■北部“要さい化”
政府は、沖縄県内での米軍基地の移転や訓練の本土移転を取り決めたSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意の関連経費を米軍再編予算に組み込む方針です。
政府は一九九七―〇五年度でSACO関連経費として計千八百十六億円を計上してきました。
「中間報告」は、沖縄本島の米空軍嘉手納基地(嘉手納町など)以南の基地を北部に集約し、“要さい”化する方向を打ち出しており、牧港補給基地(浦添市)や那覇軍港(那覇市)の移転などを狙っています。この場合、普天間基地に代わる新基地建設費用に加えて、さらに金額は膨れ上がることになります。
■空母艦載機でも
米海軍厚木基地(神奈川県)に駐留する米空母艦載機部隊の米海兵隊岩国基地(山口県)への移転費用も莫大です。
「中間報告」は、岩国基地に配備される艦載機部隊と既存の米海兵隊航空部隊などのために「追加的施設、インフラ及び訓練区域の整備」を行うと明記。前出の「基地構造報告書」によると、厚木基地内で米軍が管理する建物は約三百二十棟にものぼります。
また、厚木基地内には広大な米軍専用ゴルフ場がありますが、岩国基地には存在しません。
政府は現在、〇八年度の完成を目指して、岩国基地の拡張工事を行っています。総工費は約二千四百億円ですが、艦載機部隊が移転することになれば大幅な増額は避けられません。
■自衛隊再編でも
「中間報告」は、米軍と自衛隊との一体化を進めるため、航空自衛隊航空総隊司令部の米空軍横田基地(いずれも東京都)への移転や米陸軍キャンプ座間(神奈川県)への陸上自衛隊「中央即応集団」司令部の新設など、自衛隊の再編も盛り込んでいます。これに伴う費用も必要です。
「中間報告」は、日本政府が高速輸送艦を導入し、米軍を支援することも盛り込んでいます。現在、沖縄の米海兵隊が使用している高速輸送艦の建造費用は「五千四百万ドル(約六十五億円)」(建造元のオースタル社)です。
■米の要求に応じ
外務省筋は、在日米軍再編経費について「米軍部隊の国内移転経費は日米地位協定上、日本側が負担することになっている」とし、全額を負担する考えです。
しかし、そもそも同協定で日本政府の負担とされているのは、米軍基地用地の借り上げ料と補償費だけです。それ以外はすべて米軍が負担することになっています。
政府は米国の要求に応じ、地位協定を拡大解釈して七八年度から「思いやり予算」として米軍駐留経費の肩代わりを始めました。このうち米軍施設建設費の負担は七九年度から始まり、〇五年度まで二十七年間で総額約二兆円に達しました。
今回の在日米軍再編の経費だけで、これに匹敵しかねません。(竹下岳)
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