2005年12月10日(土)「しんぶん赤旗」

主張

立川ビラ配布裁判

断罪されるべきは政治弾圧


 立川ビラ配布事件の裁判で、東京高裁は、一審の無罪判決を破棄し、三人の被告に十万―二十万円の罰金刑を言い渡しました。

 裁判の争点は、防衛庁立川宿舎(東京都立川市)にイラク派兵反対のビラを配布した行為を、「住居侵入罪」として罰すべきかどうか、です。一審の東京地裁八王子支部は、「刑事罰に処するに値する程度の違法性があるものとは認められない」と無罪判決を出しました(〇四年十二月十六日)。これを逆転させて有罪とした東京高裁の判決は、道理のない不当なものです。

■憲法と人権への態度

 一審判決は、このビラ配布を「憲法二一条一項の保障する政治的表現活動の一態様であり、民主主義社会の根幹を成すものとして…商業的宣伝ビラの投函(とうかん)に比して、いわゆる優越的地位が認められている」と認定。普通の団地のようになっている宿舎の共用部分を通ってポストにビラを入れたとしても、「居住者及び管理者の法益の侵害も極めて軽微」であり、商業宣伝ビラの配布は放置されているのに、防衛庁や自衛隊からの正式な抗議といった事前連絡もなしに「いきなり検挙して刑事責任を問うことは、憲法二一条一項の趣旨に照らして疑問の余地なしとしない」とのべていました。

 「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」という憲法第二一条の規定を正面にすえた、当然の判断です。

 ところが、東京高裁判決は、憲法と人権にたいする姿勢があいまいで、有罪の理由として「ビラによる政治的意見の表明が表現の自由により尊重されるとしても、管理者の意思に反して建造物などに立ち入ってよいことにはならない」とのべています。

 一般論としてはもっともらしく聞こえますが、住民に危害を加えるものでないことが明白なビラ配布にまで刑事罰を科して禁止する根拠にはなりません。今回の事件でも、正式に抗議、注意をすればよかったのです。世の中の常識では、注意してやめさせる、という程度のものにすぎません。

 それもせずに、いきなり逮捕し、二カ月半も勾留して脅迫的な取り調べを行ったうえに、刑事罰を科そうとしたのが、今回の事件です。イラク派兵反対の主張を抑圧する狙いからとしか考えられません。

 その点に関連して、一審判決は、「本件で被害届を提出した防衛庁の側も、一般のアパートの集合郵便受けに自衛官募集のビラを投函していることにも照らせば、本件各公訴提起には、ビラの記載内容を重視してなされた側面があることは否定できない」と指摘しています。政治弾圧、言論抑圧であることは、明らかです。

 もしも、“ビラの中身を問題にしているのではない。あらゆる住居侵入を取り締まり、処罰する”というなら、自衛官募集のビラをアパートなどに配布している防衛庁職員も逮捕しなければなりません。一般の宣伝チラシの配布や訪問販売、宗教団体の各戸訪問なども、逮捕・処罰の対象です。こんなことは、普通、やらないことです。

■言論の自由の確保を

 最近、警察などによる言論・政治弾圧が相次ぎ、一般紙でも「横行する『プチ逮捕』 市民、僧侶…対象が拡大 米軍再編絡み活動萎縮(いしゅく)狙う」(「東京」十一月十四日付)と、批判する記事が出ています。

 断罪されるべきは、自由と人権を踏みにじる政治弾圧です。


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