2005年12月9日(金)「しんぶん赤旗」

主張

イラク派兵の延長

危険な役割を増大させるだけ


 政府は、イラク特別措置法にもとづく基本計画を変更して、自衛隊イラク派兵の一年延長を閣議決定しました。期間は十二月十五日から来年十二月十四日までです。

 イラク戦争は、「大量破壊兵器をもっている」とアメリカが一方的に決めつけて始めた戦争です。しかし、大量破壊兵器は存在せず、アメリカによる戦争の口実偽造が明確になっています。軍事占領は、多くのイラク市民の命も奪っています。

 小泉政権は、日米同盟を絶対視し、米軍支援のために自衛隊派兵を強行しました。それをさらに延長するのは重大な誤りです。

■米国の支援拡大要求

 イラクに三十八カ国が軍隊を送りましたが、相ついで撤退し、派兵継続を表明している国はいまや二十カ国余りにすぎません。ところが、小泉政権は、撤退を拒絶し、基本計画に、新しく「国際社会の一員としての責務を果たす」と明記しました。孤立を深めるブッシュ政権を激励するため、イラク派兵を継続し、どこまでも従うという“対米忠誠心”を示したのです。

 基本計画で、延長期間内に、現地の治安情勢や英豪など多国籍軍の構成の変化などを見極めて「適切に対応する」と書いたことを、来年五月ごろといわれる英豪軍の撤退に伴って撤収するものであるかのように指摘するむきもあります。

 もともとサマワも「非戦闘地域」とはいえませんが、英豪軍が撤収すれば、いっそう、イラク特措法が義務付けた「(自衛隊員の)安全の確保」ができなくなるのですから撤退は当たり前のことです。しかし、小泉首相は、記者会見で「英豪軍と緊密に連絡をとって治安状況を十分考えて活動する。適切に判断する」とのべただけで、撤収の可能性については一切言及していません。

 イラクに派兵されているのは、陸上自衛隊だけではありません。航空自衛隊がクウェートを拠点として、イラク南部のタリルなどの空港を往復し、米軍の兵員や軍事物資を空輸しています。空自は二〇〇四年三月から二百三十三回(日)空輸しました。二・七日に一回の割合で、米軍作戦を支援しています。こうした空輸が米軍の国際人道法に反した無差別殺りくを助長する役割を果たしていることは明白です。

 米軍は、いまなお激しい空爆をくりかえしイラク民間人の命を多数奪っています。〇三年三月の開戦から今日まで、米英の研究者でつくる「イラク・ボディ・カウント」の発表では、「最大三万八百人」、イラク人道組織「イラキュン」は、「十二万八千人」と発表しています。

 米軍の無差別殺りくを後押しするのは、平和と人道に反しています。「復興人道支援」ではありません。

 しかも、エデルマン米国防次官は、訪米中の民主党代表に、「活動が終わった部隊に別の駐留を提案することは当然あり得る」とのべ、陸自部隊に別の地域を押し付ける考えさえ示しています。米政府は、空自部隊に空輸支援の拡大と輸送先の拡大も求めています。

 自衛隊イラク派兵の延長は、これまでにも増して、危険な役割を果たすことにつながります。

■ただちに撤退を

 日本は、国連加盟時に、「国連憲章の目的及び原則をみずからの行動の指針とする」と誓約しました。

 国連憲章違反のアメリカのイラク戦争からただちに手を引き、憲法の平和原則にもとづいて、平和手段によるイラク復興に尽力すべきです。


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