2005年12月7日(水)「しんぶん赤旗」
主張
国民投票法案
国民無視から生まれる矛盾
自民党、公明党、民主党は、改憲のための国民投票法案の国会提出をめざし、協議してきました。そのなかで与党幹事長・政調会長会談が、議員立法ではなく、政府提出法案にすることで一致したため、民主党が強く反発。自民党の武部幹事長は「民主党とも相談して議員立法でやるべきだ」と軌道修正をはかり、三党による議員立法で次期通常国会提出をめざすことにしました。
この騒ぎから見えてくるのは、国民投票法推進で一致している自・公・民三党の間でも、矛盾、あつれきがあるということです。それは、根本的には、国民無視の策謀をすすめていることに起因するものです。
■「国民のため」ではない
「院の権威を無視し、政党間の信頼関係を損ねる暴挙」だと、自公両党の合意を批判した枝野・民主党憲法調査会長の談話は、その根拠を次のように述べていました。―国民投票法を「行政府に依存して制定することは、国会としての責任放棄」。「国民投票法制の中身」としても「政党その他の政治団体による国民投票運動の規制などを含んでおり…政党間の主義主張を競争しあう土俵づくりとして、議会において議員立法で制定されるべき性格のもの」だ。
改憲問題での国会と行政府との関係をとりあげていますが、ここにも主権者である国民を無視・軽視する姿勢があらわれています。
そもそも、戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認という九条で示されている平和原則を守り、生かす政治を行うのであれば、改憲も改憲のための国民投票法も必要ありません。
必要がなく、国民の要求でもない国民投票法の制定を狙うのは、九条の根本的改廃のためです。けっして「国民のため」ではありません。
自民党の「新憲法草案」は、「自衛軍を保持する」と明記し、アメリカとともに海外で戦争できる国にすることをめざしています。そのために、国民に「国を守る責務」を課し、国民の自由や権利よりも「公の秩序」を優先させています。
民主党の「憲法提言」も、「自衛権」を明記して、国連多国籍軍への参加などの形で海外での「武力の行使」に道を開くものとなっています。
公明党は、九条の条文を残しつつ新たな条文を書き加える「加憲」を主張していますが、自民党などの改憲と合流する方向です。
九条改憲は、日本を「海外で戦争する国」にかえ、平和と国民の人権を損なうものです。この改憲策動と一体のものであるために、国民投票法案は、中身としても、反国民的なものになります。
たとえば、枝野氏の談話は、「国民投票運動の規制」を含む中身だとしています。しかし、主権者である国民が憲法をどうするかを判断するというのは、議員を選ぶのとは次元が違います。言論の自由をどう保障するのかが最大の課題であるはずなのに、初めから「運動の規制」を盛り込むのは、国民の自由な議論と活動を抑えることにほかなりません。
■広く反撃の声を
民主党は、自公両党に従来の協議を尊重するよう求め、そうでなければ来年の通常国会に独自の国民投票法案を提出して「厳しい姿勢で対峙(たいじ)」すると言っていました。「対峙」どころか、悪法の競い合いにすぎません。自公両党が民主を含む三党の「議員立法」にしたので、悪法推進に拍車がかかる危険があります。
国民の利益を根本から損なう改憲と国民投票法制定策動に、広く反撃の声をあげていきましょう。