2005年12月6日(火)「しんぶん赤旗」
主張
サマワの自衛隊
「ノージャパン」の声なぜか
イラク南部サマワ近郊のルメイサで、自衛隊が市民のデモに取り囲まれ投石される事件が起きました。
額賀防衛庁長官は、事件前日の三日、短時間、サマワを視察し、「現地の治安は比較的安定」「陸自部隊の活動がサマワ市民から支持されていることを確認した」とのコメントをだしたばかりです。帰国後の記者会見で、投石事件は「初めてのことではなく何回かあった」と多発の事実を認めています。陸自の車両が通過中に道路爆弾で攻撃された事件もこの間おきています。
サマワ市民の反発を無視して「支持されている」というのは、“大本営発表”のようなものです。
■民間支援を阻害する
事件は、自衛隊が補修した障害者施設の竣工(しゅんこう)式が行われていたところで発生しました。自衛隊の現地指揮官らにたいして、イスラム教シーア派サドル師派のデモ隊が、「ノーノージャパン」と叫びながら投石。軽装甲機動車のサイドミラーが壊れました。なぜ、「ノージャパン」の声が強まるのか、実情を直視する必要があります。
最大の問題は、イラクを侵略した米軍を支援するための自衛隊イラク派兵だということです。米軍は、北部を中心に大規模な攻撃作戦をくりかえし行い、多数のイラクの国民の命を奪っています。小泉内閣は、自衛隊を米軍主導の多国籍軍に組み込み、撤退する国が相つぐなかでも、サマワに駐留し続けることでアメリカに忠誠を示し、クウェートの基地から米軍に空輸支援を行っています。サマワを含むイラク南部を担当する英軍も、イラク軍に逮捕された特殊部隊員の奪還のために戦車を突入させるなど、占領意識むき出しの行動で強い反発をうけています。米英軍と一蓮托生(いちれんたくしょう)の関係でいる限り、日本にたいする反発は強まるばかりです。
また、自衛隊を送り込むための現地工作で、サマワ市民の過大な期待をあおったことも裏目にでています。自衛隊が二月まで行っていた給水は、十六万市民のうち一万六千人に一日当たり四―五リットルでした。道路補修や建物補修で、イラク人を雇用しているといっても、人数は限られ、失業問題は改善されていません。この二年間で使った六百五十億円の巨費は、部隊六百人の維持が中心で、市民生活を目に見えて改善するものではありません。そのことに不満をもつ市民が増えています。
本当に“イラク復興のため”というなら、民間が力を発揮できる状況をつくることが大事です。しかし、自衛隊が駐留するかぎり、日本のNGOも民間企業も安全に活動できません。逆に危険にさらします。
フランスのNGO「アクテッド」は、サマワで七十台以上の給水車を運行・給水し、近隣の多くの町に浄水場をつくり感謝されています。これだけの大規模な支援活動ができるのは、フランスが、アメリカと一線を画し、軍隊を派遣していないからです。
サマワ市民が求めるイラク復興支援を本格化するためにも、自衛隊の撤退が必要です。
■撤退を急げ
当初、イラク多国籍軍参加国は三十八カ国でした。しかし、イラクが「大量破壊兵器を保有している」との口実がウソだったことがはっきりし、すでに十四カ国が撤退、四カ国が撤退を開始しています。
小泉政権は、自衛隊のイラク派兵継続の検討をやめ、ただちに全面的に撤退すべきです。