2005年12月4日(日)「しんぶん赤旗」
危険潜む通学路
ブザーの音届かない
民家遠く人通り少なく
栃木・女児殺害
栃木県今市市で小学一年生の女児(7っ)が行方不明となり、二日遺体で発見されました。犯行現場になったのは安全であるはずの通学路。広島市で起きた事件の解明も終わらぬままに繰り返された事件に「なぜか」の憤りを胸に、三日、女児が最後に確認された通学路を歩きました。(藤川良太)
学校から女児の自宅まで約二キロ。自宅に向かうとすぐに日中でも日の当たらない雑木林の中を通る道に入ります。温度は下がり、那須連山から吹き降ろす風が身を刺します。春耕を待つ田。野菜づくりのビニールハウス。
一日、女児はこの通学路を通り一緒に下校していた同級生三人と歩いて十分ほどの距離にあるY字路で別かれた後、行方が分からなくなりました。一人となった女児が向かったのは自宅へ向かう道。民家の少ない方向でした。
幅三メートルほどの舗装道路で人通りはほとんどありません。小学校の校長は「防犯ブザーを持たせている」と安全対策を強調しますが、犯行がここで行われても「防犯ブザー」の音はかき消え、気付くことは難しい。
女児が助けを求めようにも民家は遠い。同級生と分かれた場所から一番近い民家の男性は、「この当たりの人たちは昼間、ほとんど仕事でいない」と話しました。犯行はこの状況を分かった上でのことなのか――。
二日夜の会見で教頭は「おばあちゃんが迎えに来ているかもしれないと“近道”を通ったのかもしれない」と推測しました。
「近道」は、通学路の女児を最後に確認した同級生と分かれたY字路から百五十メートルぐらい行って右に曲がった道。曲がると道路の舗装はされておらず、通り沿いに民家はありませんでした。その道を進むと途中で道は無くなりました。腐葉土の地面は一歩ごとに三センチほど沈み、七歳の女児が歩くのは大変です。
いずれの道も女児一人ではいかにも不安です。
学校側は防犯対策として、通学路に「ひなんの家」を設置していました。何かあったら飛び込める場所です。
「ひなんの家」をしている女性(50)は、女児が訪ねてきたことがあるといいます。しかし、女児が通る通学路上には二軒しか、「ひなんの家」がありません。うち一軒は道路から五十メートルほど入りこまないと住宅の玄関につきませんでした。
「ひなんの家」の女性はいいます。「私のところには不審者についての情報はありませんでした。情報が共有されていたならば下校時に外まで出て見守るなど違った対応ができたのに」
記者会見で校長は「たしかに『ひなんの家』には伝わっていませんでした。改善します」と語りました。
小さい命を守るためには、徹底した情報伝達や地域の連携などの見直しが必要――。そんな思いを強くしました。