2005年11月27日(日)「しんぶん赤旗」

加速化 自治体の有事体制

軍事コンサルタント進出

再編問題で米軍支援の危険も


 政府と福井県などが二十七日に全国初の「『国民保護』実動訓練」を実施するなど、具体化の動きが加速している有事法制―。これに基づき自治体や国民を動員する“戦争態勢づくり”は今、どこまで来ているのでしょうか。(竹下岳)

 有事法制は二〇〇四年までに成立し、現在は「国民保護法」を中心に具体化が進んでいます。

 同法は、米軍の先制攻撃戦争などの際、自治体に「国民保護」の名で住民統制の「責務」を課すもの。住民の避難や救援に加え、民有地の強制使用や物資の徴発、交通規制などを罰則付きで強制的に行えるようにしています。住民の「国防意識」の植えつけにもつながる「啓発」や訓練の実施も盛り込まれています。

 政府は今年三月、同法が定めた措置を実施するにあたっての「基本指針」を決定。現在、四十七都道府県が今年度中を期限に、同指針を具体化する「国民保護」計画を作成中です。市町村も〇六年度中に同計画を作成することになっています。政府も十月、二十八省庁の計画を作りました。

 「これまでに防災関連業務や危機管理業務で蓄積した技術やノウハウを活用し、都道府県の国民保護計画の策定業務をご支援します」

 軍需企業や自衛隊出身者を研究員として採用している「三菱総合研究所」が、全国の自治体に配布しているPR資料の一文です。

 有事法制が想定している日本への直接の武力攻撃は、政府も「ほとんどあり得ない」としています。自治体も切迫感を持てず、「何をしたらいいのか分からない」状態。自治体職員のリストラも進み、防災部門に「有事対応」まで課しているのが実態です。計画策定の期限も迫っています。

■実際に契約も

 このため民間コンサルタントが“ビジネスチャンス”と見て、市町村を含めて二千近くに及ぶ自治体への営業活動を強めているのです。

 実際に自治体が契約するケースも目立っています。

 福井県では、「テロ対策」や「インフラ防護」といった軍事部門のコンサルタントを請け負っている「独立総合研究所」と契約。同研究所は「有事における避難マニュアルにかかる調査」を実施しています。

 調査内容は、「既存輸送手段の輸送能力」「避難状況の類型化」「既存の施設で避難施設の指定に適したもの」など。契約額は約二百八十万円となっています。

 同研究所によると、今年は佐賀、新潟、沖縄各県など約十五、昨年は福井、鳥取、神奈川各県など約二十の自治体から依頼があったといいます。

 一方、日米両政府が十月末に合意した在日米軍再編の「中間報告」では、有事法制に新たな意義付けがされました。

 「日本の有事法制に基づく支援を含め、米軍の活動に対して、事態の進展に応じて切れ目のない支援を提供するための適切な措置をとる」

■協力の「責務」

 とりわけ強調しているのは、日本の港湾・空港、道路、水域・空域などの使用について米軍に対する協力を強化することです。そのために、自治体と緊密に調整し、民間空港・港湾の詳細な調査や訓練を実施することも決めています。

 有事法制のうち、「米軍支援法」は自治体にも米軍協力の「責務」を課しています。また、「特定公共施設利用法」では米軍や自衛隊による空港・港湾・道路などの優先使用が保障されています。これらの多くは自治体管理です。

 今後、自治体は「国民保護」計画だけでなく、米軍や自衛隊に対する支援の具体化を迫られる危険が強まっています。


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