2005年11月26日(土)「しんぶん赤旗」
消費電力量―本紙指摘のカタログ表示のごまかし
電気冷蔵庫測定方法見直しへ
消費者の告発をもとに本紙が指摘してきた電気冷蔵庫のカタログなどの「JIS年間消費電力量」が過少表示され、電気代を不当に安くみせていた問題。使用実態と大きく乖離(かいり)する電力量の測定方法の見直しが始まっています。
■使用実態にあった表示に
検討をおこなっているのは、経済産業相の諮問機関・総合資源エネルギー調査会省エネルギー基準部会電気冷蔵庫等判断基準小委員会です。
■使用実態とのかけ離れ認める
九月末に開かれた第一回同小委員会。「JIS規格自体を本小委員会で検討することではないが、使用実態と乖離していることが確認されており、電気冷蔵庫等の消費電力量は省エネルギー政策の観点からも重要なことである」ことから、「測定方法の考え方を議論する必要がある」と討議されました。
JIS(日本工業規格)は、経済産業大臣が制定するもの。なぜ、「JIS年間消費電力量」が使用実態と大きく乖離しているのか。これまで本紙はメーカーなどの取材をもとに、現在の測定方法では、大きく電力を消費する庫内温度補償ヒータ、凍結防止ヒータなどのスイッチを入れないことになっているなどのため、高機能・多ドアタイプの電気冷蔵庫では最大で消費電力量が三―四倍にもなると指摘してきました。
省エネ性能を比較できる「省エネラベル」を店頭の製品に表示するとりくみを推進してきた団体や消費者・環境団体なども、使用実態に即した測定方法の見直しや適正な表示、審議内容・資料の公開を求めて、国や日本電機工業会に申し入れてきました。
第一回小委で配布された資料では、現在の測定方法と使用実態との乖離の主要な原因を、「電気冷蔵庫の設置条件及び温度の調整装置の設定及び周囲温度の影響等によるヒータ動作の違い等」とし、「実使用時のエネルギー消費効率を測定するには必ずしも最適な方法ではなくなってきている」と、これまでのやり方が通用しないことを認めています。
■カタログ値の2.35倍「省エネセンター」が年間消費電力量調査
資源エネルギー庁の外郭団体「省エネルギーセンター」が、各種ヒータのスイッチを入れるなど一定部分を実使用に近い状態で測定したデータも参考としてあげられています(ただ、庫内はすべて空で、自動製氷機能はオフ)。容積四百四リットル、ドア数五、年間消費電力量カタログ値百八十キロワット時の電気冷蔵庫で調べた結果によると、年間消費電力量は四百二十三・八キロワット時に。カタログ値の二・三五倍となっています。
■本当の省エネへ設計思想変更を
電機関連会社を経営するAさん(神奈川県在住)は、「少なくとも二・四倍くらいの乖離があることを認めたことは大きいと思いますが、どのメーカーの、どういうタイプの冷蔵庫かによっても数値は変わってきますよね」といいます。
同小委員会では、こうしたことを踏まえ、見直しの考え方が示されました。「より消費者の使用実態にあった測定方法を確立するため」としています。
周囲温度の変更、一般家庭の台所環境を想定した設置条件への変更、冷凍室・冷蔵室などへの庫内負荷の投入、庫内温度調節装置の設定、露付き防止ヒータのスイッチを入れる、自動製氷機の使用、扉開閉回数を増やすなどとなっています(表参照)。
この提案について、さきのAさんは、いいます。
「いままで付加機能のスイッチを入れないで、はずしてきたのを改善しようとしているのが、やはり一番評価できます。周囲温度や扉の開閉回数などの測定条件とデータをきちんと示してくれれば、省エネのための使い方を消費者自身が考えますよ。メーカーは、本当の省エネのために電気冷蔵庫の設計思想の変更が求められてくると思います」
◆5月までに「まとめ」 測定方法については、年内に予定されている第二回小委員会で検討。来年二月中までに、省エネの目標基準値などの中間取りまとめをおこない、パブリックコメントを募集します。五月中に最終取りまとめをして、省エネルギー基準部会に報告します。
省エネルギー基準などの審議の情報公開について、批判の声がでていましたが、今回の小委員会は公開が原則となりました。
■ひどい!問題化まで放置の行政や業界
■大阪では市民が計測の取り組み
NPO法人「地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)」専務理事・早川光俊さん(弁護士)の話 冷蔵庫の消費電力の表示と実態が三倍も四倍もかけ離れていた問題を、新聞報道や消費者・環境団体などが問題にするまで、これを放置していた行政や業界の対応は厳しく批判されてもしかたがないと思います。
今回、私たち環境団体や消費者団体が経済産業省や日本電機工業会に申し入れた、測定方法を実際の使用実態に合わせ、審議や資料を公開する方向で見直しが検討されていることは評価できます。
家電製品の省エネ化は地球温暖化防止にとって重要な活動で、全国で省エネラベルの活動が取り組まれています。大阪では市民が冷蔵庫の消費電力を計測する取り組みを進めています。見直しにあたっては、市民の意見や市民の計測結果も参考にして、開かれた形で検討を進めてほしいと思います。
■評価できる審議資料などの公開
京都府や京都市、消費者・環境団体などでつくる「京都省エネラベル協議会」事務局長・伊東真吾さんの話 これまでの電気冷蔵庫の消費電力量の測定方法が消費者の使用実態と乖離していることを国が認めた上で、見直しをおこなおうとする方向性はよいと思っています。
ただ、百パーセント使用実態に即した基準というものはありえないので、どのくらいこえていると具合が悪いかなど、測定方法が具体的にどういうものになるか、今後の審議を見守っていきたい。これまでは個別の審議はクローズでおこなわれてきましたが、今回はオープンな形でおこなわれるのは評価できます。
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「京都省エネラベル協議会」では、「製品によって実測値とカタログ値との差の倍率も著しく異なり(場合によってはカタログ値の四倍近く…)、AAA、AAの基準の信頼性を揺るがすものと考える」と、省エネ基準達成率に基づく評価の信頼に疑問をあげて、冷蔵庫の「省エネラベル」張り付けを中止しています。
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