2005年11月25日(金)「しんぶん赤旗」
“最大の受益者は米国”
自民改憲案で米各紙
“海外派兵に道”
【ワシントン=鎌塚由美】自民党が結党五十年記念大会で発表した新憲法草案について二十三日付の米国各紙は、「自衛隊が米国の支援に駆けつけられるようにすることが目的」「米国が促した改憲だ」などといっせいにそのねらいを報道しました。
ワシントン・ポスト紙は、「『集団的自衛権』を容認し、他国の軍事支援に駆けつけるという、より幅広い憲法解釈に道を開く。最大の受益者は米国だ」とし、「米国は、日本がそのような措置をとるよう促してきた」と伝えました。
ロサンゼルス・タイムズ紙も、ねらいは米国に対する軍事的支援だと解説。しかし、「最強国に復帰をねらう日本」には世界各国が反対や疑問を示していると指摘し、原因は、小泉首相の靖国神社参拝など「日本の指導者が過去を反省していない」ことにあると論評しました。
シカゴ・トリビューン紙も、「改憲は日本に、より明確な国際的軍事的役割を与える」ことが目的だと伝えました。
■強力な軍事力創出へ
■靖国参拝狙う/軍隊の足かせ外す
ワシントン・ポスト紙二十三日付に載った記事の表題は、「日本の憲法草案、軍隊を再定義」。この記事は、ボストン・グローブ紙にも「平和主義者の日本が強力な軍事力創出に動く」と題して転載されました。
記事は、自民党の憲法改定案は、海外での自衛隊の平和維持活動を是認するだけでなく、他国の軍事支援に駆けつけられるようにしていると解説。「最も可能性の高い受益者は、日本の一番近い同盟国、米国だ」と述べました。
九条改定では、「特に台湾をめぐり米国と中国の間で紛争が起こった場合、重大な意味を持つ」と指摘しました。
自民党案が政教分離の表現を弱めたことにも注目し、「第二次世界大戦の戦犯を含めた戦死者をまつる靖国神社に首相が容易に参拝できるよう狙ったのは明らかだ」と論評しました。
ロサンゼルス・タイムズ紙は、「軍隊の足かせをはずす日本」との見出しで自民党の改憲案を伝えました。
「『集団的自衛権』の名の下に、自国の軍隊により高い地位を与え、海外での展開を容易にする」と紹介。「日本が主要な戦略的大国として再び姿をあらわす覚悟を示唆し、中国の高まる影響力に対する日本の対応とみられている」との見方を示しました。
九条の改定は、「地球規模の平和維持活動に日本を全面的に参加させるとともに、米国や台湾が求めれば、同盟国の支援に駆けつけることに道を開く」と指摘。背景に、「アジア、中東地域でさらなる安全保障の役割を担うために、日本が陸海空の戦力を提供することを求める米国の後押し」があると解説しました。
また、国連安保理常任理事国入りなど「最強国の地位に復帰しようとする日本の願望」が、日本の植民地支配を受けた中国や韓国をはじめ世界で「幅広い反対にあっている」と報じました。
「世界の疑念」の原因は、「日本の指導者が残酷な帝国主義という自国の過去を深く反省せず、(近隣諸国の)いまも消えない苦痛を理解していないという思い」にあると分析。「残虐なアジア侵略を行って処刑された人々をまつる靖国神社への小泉首相の参拝がその印象をいっそう強めている」と述べました。
シカゴ・トリビューン紙も、自民党改憲案について「新しい日本軍の役割を主張」との表題で通信社電を使って報道。「日本は武装した平和維持活動に参加し、米国など同盟国との軍事行動に加わることができるようになる」との声を伝えました。