2005年11月23日(水)「しんぶん赤旗」

侵略正当化する靖国・遊就館

麻生外相「事実の展示だけ」と肯定

首相見解とも食い違い


 侵略戦争を正当化する靖国神社の戦争博物館「遊就館」について麻生太郎外相が二十一日、「戦争を美化するという感じではなく、その当時をありのままに伝えているだけの話だ」と発言しました。これについて、中国側が批判するなど、大きな外交問題になっています。


 麻生氏の発言は、二十一日に出演した米通信社ブルームバーグ・テレビの番組でインタビューに答えたもの。

 小泉純一郎首相は先のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)終了後の記者会見(十九日)で、過去の戦争を「防衛」の名で正当化する見解を支持するのかと英BBC放送記者から問われ、「支持していない」と答えています。麻生外相は、この首相発言について見解を問われ、「遊就館には何度か行ったことがあるが、戦争を美化するという感じではなく、その当時をありのままに伝えているというだけの話だ。美化しているという感じではなく、その時はそうだったという事実を述べているにすぎないと思う」と述べ、侵略戦争を推進していた当時の政府や軍部の言い分を肯定しました。

 小泉純一郎首相は国会でも、「靖国神社の考えと、政府の考えは違う」と答弁しており、麻生発言は首相見解にも反するものです。

 ▼遊就館 靖国神社に付属する軍事博物館。一八八二年開館、一九四五年に陸海軍省の管轄を外れ、四六年には富国生命に賃貸。八六年に再開され、二〇〇二年に大改修がおこなわれました。靖国神社宮司は、遊就館の「使命」として、「英霊顕彰」と「近代史の真実を明らかにすること」を列挙。日本の侵略戦争を「自存自衛」、「皮膚の色とは関係ない自由で平等な世界を達成するため、避け得なかった戦ひ」だったと正当化するなど、「正しい戦争」論の宣伝センターとなっています。

■中国外務省報道官が強く批判

 【北京=菊池敏也】中国外務省の劉建超報道官は二十二日の記者会見で、麻生太郎外相が二十一日、靖国神社内の「遊就館」の展示内容を支持する発言を行ったことについて、「こうした言論を発表したことに驚いている」と強い不快感を示しました。

 劉報道官は「靖国神社は(侵略戦争の)歴史を否定し、日本軍国主義の侵略を美化するものだ。遊就館はそのなかで『靖国史観』を宣伝する中核的な施設だ」と指摘しつつ、麻生外相が「重要な歴史さえ否定するのであれば、彼はあの時期の歴史に正しく対応する勇気がないことを物語るだけだ」と厳しく批判しました。

 劉報道官は、日本政府に対して「靖国神社問題の重大性と敏感性をしっかり認識し、責任ある態度をとり、適切に処理すべきだ」と改めて要求し、具体的な行動をとることが「アジアの隣国との関係を改善し、ともに未来を切りひらく唯一の正しい道だ」と強調しました。

 劉報道官はまた、二十日の米中首脳会談で日中関係について両首脳が意見交換したことを確認するとともに、「ブッシュ大統領に中国側の立場をはっきり述べた。ブッシュ大統領は、これに理解を示した」と述べました。

 劉報道官は、具体的なやりとりを明らかにしませんでしたが、「中国側の立場は、はっきりしている」と述べ、日中関係をめぐる中国側の基本的な立場を説明したことを示唆しました。


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