2005年11月22日(火)「しんぶん赤旗」

主張

貧困率の上昇

こどもの未来を閉ざすのか


 小泉内閣は、暮らしに困ったときの最後のよりどころである生活保護と、母子家庭などに支給する児童扶養手当の、国庫負担の引き下げをねらっています。

 政府は、生活保護の受給者が増えていることを理由に、その抑制のために、地方に負担を転嫁しようとしています。

■就学援助受ける子が増加

 しかし、国民生活の深刻な実態に目を向けるなら、生活保護抑制をはかるなど本末転倒です。

 政府が、「構造改革」と称して行ったリストラ推進や社会保障のあいつぐ改悪によって、失業者や生活困窮者が増加しています。

 OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本の貧困率は15・3%(二〇〇〇年)に達し、調査した二十七カ国のなかで五番目に高くなっています。この貧困率は、全世帯の年収の中央値の半分以下しか収入のない世帯を貧困として、その人口比率を出したものです。日本の人口の15・3%といえば、千九百万人以上にのぼります。

 生活保護を受けている人は、二〇〇〇年時点で約百七万人であり、今年一月で約百四十四万人です。生活保護はもっと利用しやすくするなど拡充こそが求められているのです。

 おとなの貧困と社会的格差の広がりは、子どもの生活に困難をもたらします。

 国連児童基金(ユニセフ)の“豊かな国の子どもの貧困”についての報告書によると、日本の子どもの貧困率(〇―十七歳)は、調査した二十六カ国中十番目に高い14・3%(二〇〇〇年)です。日本より子どもの貧困率が高いアメリカ(二番目で21・9%)やイギリス(七番目で15・4%)が一九九〇年代後半から二〇〇〇年代はじめにかけて、2―3%減らしているのに比べ、日本は2・3%も増えています。

 “近い将来、日本はアメリカに次いで子どもの貧困率が高い国になる恐れがある”との指摘もあります。

 実際、小泉内閣発足の〇一年以降、子どものいる家庭の経済的困難はいっそう増しています。たとえば、就学援助(生活保護に準じる水準世帯の児童・生徒に行う給食費や学用品などの援助)を受ける子どもが、一九九九年度と二〇〇三年度を比較すると、四割増となっています。

 政府は、増えている理由について「昨今の厳しい経済状況」を認めながらも「市町村の基準設定も若干かかわっている」と自治体の対応に問題があるかのようにいって、就学援助対象を広げる努力を敵視。就学援助の国庫補助を減らし対象児童生徒を削減しています。

 労働者の平均賃金(毎月勤労統計調査)は同じ時期(九八―〇三年度)、月二万三千円も減っています。雇用と賃金を破壊する小泉「構造改革」政策が、貧困の新たな広がりをつくっていることは明らかです。

■国民の連帯した力で

 これから、子育てを行う若者の二人に一人が、派遣やパート・業務請負など不安定な雇用におかれていることは、子どもの貧困をいっそう深刻にする要因ともなります。年金はわずか月数万円、貯蓄もない高齢者が増えています。

 日本共産党第二十四回大会決議案は、ルールなき資本主義のもとでの貧困と社会的格差の新たな広がりを分析し、人間らしい暮らしの基盤を破壊する攻撃にたいし、国民が連帯してはねかえすことをよびかけています。子どもの未来を閉ざす日本社会の貧困をこのまま続けさせるわけにはいきません。


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