2005年11月21日(月)「しんぶん赤旗」
きょう日ロ首脳会談
領土交渉 道理もたず 道みえず
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小泉純一郎首相と来日中のプーチン・ロシア大統領は二十一日午後、都内で首脳会談にのぞみます。同大統領の来日は二〇〇〇年九月以来二度目で、日本の首相との会談は四度目となります。
最大の焦点は領土問題ですが、プーチン大統領はすでに「領土問題は議論しない」との立場を鮮明にしています。日本の外務省も「ロシア側の態度が非常に固いので、大きな進展は難しい」(谷内正太郎事務次官)との見方を示しており、打開の展望はありません。
■声明見送り
一九九〇年代以降、「東京宣言」(九三年)「モスクワ宣言」(九八年)「イルクーツク声明」(〇一年)など、領土問題をめぐって多くの合意文書が日ロ間で交わされてきました。
しかし、今日まで領土問題の解決の糸口すら見いだせていません。今回の首脳会談では、領土問題に関する共同声明さえも見送られる方向です。日本政府内で「ロシアは二十年前に戻ってしまった」との声も出ています。
その根源には、日本政府が国際社会に堂々と訴えることのできる、領土返還要求の道理を持っていないことがあります。
もともと日ロ間の領土問題は、日本の歴史的な領土である千島列島と北海道の一部である歯舞、色丹を、ソ連のスターリンが四五年八月に不法に併合したのが始まりです。これは「領土不拡大」という連合国の戦後処理の原則も踏みにじるものでした。しかし日本政府は、この無法をただすことなく、一九五一年のサンフランシスコ条約の「千島放棄条項」を認めました。そして、国後、択捉、歯舞、色丹の四島は“千島ではないから返せ”という「四島返還」論に固執しました。国後、択捉は千島列島であり、これは国際的に通用しない議論でした。
国際的な大義を持たないため、橋本龍太郎首相の時期には、エリツィン大統領(当時)の強権政治ぶりに期待し、首脳間の信頼関係に頼る姿勢に終始しました。
それがうまくいかなくなると、「北方領土」への公共事業などでロシア側の歓心を得る方針に転換。鈴木宗男衆院議員が暗躍し、その鈴木氏が国後島などへの公共事業発注をめぐる収賄で逮捕される事態になりました。
さらに鈴木氏と一部外務官僚は、ロシアに歯舞、色丹の「二島返還」を迫るという「裏交渉」まで進めてきました。小泉純一郎首相の任期中の事件であり、首相の責任も重大です。
■解決策なし
今回、プーチン大統領の訪日が実現しましたが、政府は領土問題を解決する方策も気概も持っていません。
麻生太郎外相は十六日、韓国・釜山での日ロ外相会談でラブロフ外相に、「両方とも領有権を主張したままでは話は進展しない。(四島開発など)何か共通のプロジェクトをしてはどうか」との考えを示しました。“領土問題はわきに置いて、まずは信頼関係を”という姿勢です。
しかし、この共同開発についても、管轄権や主権の問題が絡むため、外務省内では慎重な見方が強いのが実情です。(竹下岳)