2005年11月21日(月)「しんぶん赤旗」

主張

酒政連献金

腐敗の根源にメス入れるとき


 全国小売酒販組合中央会の元事務局長が逮捕されましたが、この事件は、元事務局長の犯罪にはとどまらない、重大な問題を含んでいます。元事務局長の直接の容疑は、酒販組合の年金共済資金からの横領です。しかし、乱脈な資金運用、政界工作のなかで、政治家がらみの不明朗なカネの流れがありました。真相と背景を徹底的に解明し、腐敗の根源にメスを入れなければなりません。

■カネを媒介に関係強化

 酒販組合中央会は、二〇〇二年に百四十四億円の年金資金を海外運用し、失敗。回収の見込みがたたず、会員に掛け金を返せなくなっています。この問題の調査のなかで、巨額の使途不明金と、元事務局長の着服が浮かび上がりました。

 酒販組合中央会の乱脈は、年金資金の運用にとどまりません。政治団体である全国小売酒販政治連盟(酒政連)を通じて政治家にカネをばらまきましたが、巨額の架空支出があり、ヤミ献金の疑惑が深まっています。酒販組合の元事務局長は、酒政連の事務局長を兼務し、政界工作も担当していました。

 年金資金を台無しにした海外投資話を仲介したのは、自民党衆院議員(元文相)の元秘書です。元秘書は、〇一―〇二年、酒政連の政治顧問を務めていました。酒政連関係者は「当時は酒の販売免許の規制緩和策をめぐり、政治活動を強めなくてはならない情勢で、政治に詳しい人が必要だった」といいます。「政界対策に金を使ったというが、当たり前のこと」(元事務局長)と、政治家との結びつきを、カネを媒介にして深めていったことが、年金資金の運用でも、酒政連の献金でも、乱脈の度合いをひどくしました。

 酒政連の資金提供は、〇一―〇四年の政治資金収支報告書で公表したものだけでも約一億円。相手は、自民党の政治資金団体である国民政治協会はじめ、自民党の派閥や民主党、そして自民・公明・民主の政治家に及びます。このほかに、東京酒政連も資金提供していました。

 元事務局長は、「朝食会」「昼食会」「夜は夜で接待」「『お車代』を渡すこともありました」とのべています(『現代』十二月号)。「お車代」は、ヤミ献金だった可能性もあります。

 酒政連による政界工作強化のきっかけは、酒類の販売を原則自由化する規制緩和策に歯止めをかけようとしたことです。酒は、人を酔わせ、中毒の原因にもなりますから、単純に自由な販売がいいとはいえません。酒屋さんは、未成年に売らないことや、深夜の販売自粛など、努力と苦労を重ねてきました。それを背景にした、規制緩和への歯止め要求には、それ相応の根拠があります。

 しかし、一定の歯止めをかける「緊急措置法」を、自民党や民主党、自・公・民の政治家にカネを渡すことで実現しようとしたことは、法律をカネで買う行為です。架空支出の実態が解明されるならば、不当性、違法性がより明確になるでしょう。

 自民党は、規制緩和で酒屋さんをいじめつつ、もう一方で救世主のような顔をしてカネを受け取ってきました。堕落・腐敗のきわみです。

■さらに大規模な買収

 酒政連とは比べものにならないほど大規模な政党・政策買収を行っているのが日本経団連です。大企業減税などの身勝手な要求を掲げ、自民党、民主党にそれを実現させるために、取り組みを評価する「通信簿」をつけ、献金を誘導しています。カネの力で政治をねじ曲げる企業・団体献金は、直ちに廃止すべきです。


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