2005年11月19日(土)「しんぶん赤旗」

民主議員が即時撤退要求

“当初から誤っていた”

イラク戦争めぐり米で論争


■ブッシュ政権“民主も開戦賛成”

 【ワシントン=山崎伸治】イラク戦争・占領の長期化をめぐって、ブッシュ政権と民主党との非難の応酬が激しさを増しています。

 民主党のマーサ下院議員は十七日、議会で会見し、「米軍はイラクから即時撤退すべきだ」と強調しました。同氏は下院歳出委員会国防小委員会の民主党筆頭委員。一九六〇年代には海兵隊員としてベトナム戦争に従軍した経験があり、イラク戦争には賛成していました。

 会見で同氏は、「米軍を本国に戻すべきときだ。米軍はやれることをすべてやった。この戦争は当初から誤ってすすめられた。情報が間違っていただけでなく、(フセイン政権の)軍隊を解散したやり方でもあらゆる間違いが犯された。米軍がこれ以上被害を受けるべきではない」と述べました。

 これに対し共和党は、ハスタート下院議長が同日、声明を発表し、「民主党は、罪のない米国民を傷つけるかもしれないテロリストに対し、米国が降伏することがよいと考えている」と述べ、「米兵に対する侮辱だ」と非難しました。下院軍事委員会のハンター委員長も同日、米PBSテレビのインタビューで、「イラク軍を十分に訓練し、自分たちの治安を維持できるようにしないで撤退するというのは、惨事の原因となる」と批判しました。

 イラク戦争をめぐって、民主党に対する非難を始めたのはブッシュ大統領でした。十一日の退役軍人の日の演説に続き、十四日、アジア歴訪の途中立ち寄ったアラスカ州の空軍基地で演説。そのなかで「三人の民主党指導者」がイラク戦争前に述べたものだとして、「(イラクの)サダム・フセイン(大統領)が積極的に核兵器開発していたという間違いない証拠がある」「対テロ戦争はサダム・フセインが権力にいる限り終わらない」「サダム・フセインは国際社会をばかにしてきたに等しい」という発言を紹介しました。

 演説で名指しはしなかったものの、それぞれ民主党のロックフェラー上院議員、レビン上院議員、リード上院院内総務の発言とみられます。ブッシュ氏は「彼らは当時、真実を語り、いまは政略を語っている」と皮肉りました。

 ラムズフェルド国防長官は十五日の記者会見で、対イラク武力攻撃が民主党のクリントン前政権下でも行われたことを強調しました。

 チェイニー副大統領は十六日夜の講演で、「サダム・フセインに対する武力行使を容認する決議に賛成した議員から無責任な発言が出ている」「大統領も私も、一部の議員が歴史を書き換えるのを見過ごすわけにはいかない」と民主党に対する非難の調子を上げる一方でした。

 イラクの現状には民主党にも責任があるというのがブッシュ政権の主張。米国民の批判がブッシュ政権に向く中、「イラク開戦には民主党も賛成していた」と非難の矛先を民主党に向けることで、国民の批判をかわそうとしています。

 しかしこれには、「対テロ戦争と民主党に対する党派間戦争とを結びつけることで、ブッシュ氏は国家指導者の地位をますます危うくしている」(十五日付米紙ワシントン・ポスト)との指摘もあります。


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