2005年11月19日(土)「しんぶん赤旗」

主張

日本の核決議

どうした「廃絶の明確な約束」


 日本政府の核軍縮決議が、国連総会第一委員会で賛成一六六、反対二(米国、インド)、棄権七で採択されています。決議は、「被爆六十周年の機会」に核廃絶への「決意を新たに」するとのべ、核不拡散条約の義務履行、核兵器の削減、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効などをうたっています。

 今年は、広島、長崎に原爆が投下されて六十年です。唯一の被爆国日本は、本来、核兵器廃絶の実現のため新たな決意で国連総会にのぞむべきです。ところが、政府の決議は、核兵器廃絶という点で後退した中身になっています。

■米核政策への追随

 昨年、一昨年の日本の決議は、核不拡散条約体制の促進を基調としながらも、二〇〇〇年五月の核不拡散条約(NPT)再検討会議で採択された核兵器国の「核兵器廃絶の明確な約束」の履行をもりこんでいました。前文は、アメリカも賛成した最終文書を「歓迎」し、「その結論を履行することの重要性を強調」と記述。本文で、「核軍縮につながる、保有核兵器の完全廃棄を達成するという核兵器国による明確な約束」を「実際的な措置の核心的重要性」をもつものと明記していました。

 核兵器国に核廃絶の「明確な約束」を誓約させたことは、日本と世界の反核運動の成果です。それが、短くとも、政府の決議に反映したことは、核兵器廃絶のため重要です。

 ところが、今年の決議は、この大事な「核兵器国による明確な約束」を本文から削り、前文で、「二〇〇〇年NPT再検討会議最終文書を想起し」と書きました。大事な言葉をなくし、抽象的表現にしています。

 それでも政府は、日本決議への賛成が過去最高になったといっています。しかし、それは、核兵器廃絶をめざす国家連合の新アジェンダ連合が、今年が被爆六十周年であることに配慮し、棄権から賛成に回ったからです。同連合は、日本政府が「明確な約束」を真剣に実現する立場なのかどうかをきびしく見てきており、今回の決議で「明確な約束」を削除したことを批判しています。

 新アジェンダ連合は、今年も、核兵器国に「核軍縮の約束実施の加速」、すべての国に「核軍縮の約束の順守」を要求する決議を提出しました。核兵器廃絶の要求をあいまいにする小泉政権との違いが鮮明です。

 ここにも、小泉政権の異常な対米追随姿勢があらわれています。

 核兵器は、ブッシュ政権の先制攻撃戦略の中核です。米統合参謀本部の核兵器作戦計画づくりも最終段階に入っています。小泉首相は、この計画を、「いかなる軍備も抑止力として機能している面が強い」(五月二十日)と、支持しています。

 日本の決議は、アメリカが反対するCTBTを含んでいるとはいえ、政府自体がアメリカの核兵器固執政策に追随しているため、核兵器廃絶を正面にすえることができません。被爆国政府として、世界の先頭に立って核兵器廃絶を実現するのが当たり前なのに、ブッシュ政権の顔色ばかりうかがい、外交の基本をゆがめるなどとんでもないことです。

■新たな飛躍へ

 国際原子力機関のエルバラダイ事務局長は、「核兵器のない世界が唯一の選択肢」とのべました。核兵器廃絶は世界の平和と安全に不可欠です。世界では核兵器廃絶に向け新たな前進をはじめています。

 核兵器廃絶の国際的世論と運動の流れをさらに大きくすることが重要となっています。


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