2005年11月18日(金)「しんぶん赤旗」
感染を防げ
鳥インフルエンザ対策に必死
中国・遼寧省
中国東北部、遼寧省では十月下旬から鳥インフルエンザでニワトリが大量死しています。十六日、感染防止に必死の現地を訪れました。(遼寧省黒山県=菊池敏也)
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黒山県でニワトリが大量死したのは十月二十六日。検査でH5N1型ウイルスによる鳥インフルエンザと確認されたのが十一月三日。鳥インフルエンザは短期間で県内に広がり、七日までに五十八の村の三百三十六戸で発生し、ニワトリなど十一万羽が死にました。
黒山県では近年、養鶏が広まり、いまでは県の農業生産の三割を占めています。
■家禽を処分
中国では、鳥インフルエンザの拡大を防ぐために、病気が発生した場所から半径三キロ以内のすべての家禽(かきん)を処分しています。発生個所が多い黒山県では、すべての家禽が処分の対象となり、ニワトリの姿が消えました。
「処分するのはとてもつらかった。涙が出ましたよ」。七台子村で養鶏を営む劉万達さん(40)は、大切に育て、ようやく卵を産み始めた千羽のニワトリをすべて処分しなければならなかった気持ちを語りました。
調査のなかで、カササギなど野鳥も鳥インフルエンザで死んでいることが確認されました。同県は渡り鳥の飛行コースにあり、湿地も多く、多くが羽を休めます。今年は例年と比べて気温が高かったこともあり、感染した渡り鳥が長期間、県内にとどまり、ウイルスが広がったのではないかとみられています。
■車両も消毒
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最も重要な対策は人への感染防止です。十六日、中国衛生省は、湖南、安徽両省で、人への感染例が一例ずつあったことを公表しました。中国での初の人感染例です。
遼寧省政府の周立元報道官は同日、黒山県で記者会見し、「人への感染例および擬似感染例は報告されていない」と強調しました。同時に、鳥インフルエンザが起きた地域で重症肺炎にかかった村民の例が鳥インフルエンザであったことを「完全に排除することはできない」との見解も示しました。
黒山県に隣りあう台安県では、感染例は確認されていませんが、ここでも必死の対策を行っています。県に入る道路では、通行車両を厳しくチェック。一台ごと消毒し、ナンバーや通過時刻を記録しています。
遼寧省全体では、黒山県、北寧市、南站新区、阜蒙県の四つの行政区で感染が確認され、処分された家禽は九日まで千五百万羽にのぼりました。
■損失の補償
養鶏農家にとっては大きな損失です。劉さんは一年半ほど前から裏庭にれんがづくりの鶏舎を建て、養鶏を始めました。「鳥インフルエンザがなければ一万五千元(約二十二万円)は利益があったはず。これからというときだったのに」と悔しそうです。
中国政府は、処分一羽ごとにニワトリ(成鳥)十元(約百五十円)、ガチョウ(成鳥)十五元、幼鳥五元の補償金を支払っています。
劉さんの場合、ニワトリを処分した翌日、一万元の補償金が支払われました。「もう一度、ニワトリを飼いたい」といいますが、鳥インフルエンザが完全に収束してから半年間は養鶏ができません。「その間は出稼ぎでもしようか」と思案中です。
遼寧省で農民らに支払われた補償金総額は約二億元(約三十億円)。鳥インフルエンザ防止のために支出した財政支出は約三億六千万元にのぼっています。周報道官は、「できあいの経験はありません。実践のなかで模索し、総括していくだけです」と、鳥インフルエンザを徹底的に封じ込める決意を語りました。