2005年11月18日(金)「しんぶん赤旗」

米軍再編 基地の街から

数分おき“ゴォー”

これ以上の爆音ごめん

航空自衛隊の基地 宮崎・新田原


 宮崎県日向灘に面して広がる航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地(新富町)。日米両政府が合意した「米軍再編」中間報告で米軍戦闘機の訓練移転などが発表され、基地周辺の五自治体がいっせいに反発しています。首長、議会がそろって反対を表明、住民も全有権者から署名を集めようと運動を広げています。(渡辺 浩己)


■米軍移転 周辺5自治体が反対

地図

 「沖縄を除くと爆音のひどさは全国でもトップクラスなんですよ」。そう語るのは、新富町に六十一ある区の区長会会長、原田一二さん(67)。取材の間も数分おきに“ゴォー”という腹の底に響く爆音を残して自衛隊のF15戦闘機が飛び去ります。「窓を開けると電話も聞こえない。我慢してきたが、もうこれ以上の騒音や基地被害を受け入れるわけにはいかない」と語気を強めます。

■常駐化への不安

 同基地には航空自衛隊の第五航空団や飛行教導隊など八部隊が駐屯。同町六十一地区のうち五分の一に当たる十三地区が「騒音激甚地区」に指定されるほどの被害を受けてきました。

 「中間報告」や防衛施設庁によると、この基地に米軍の嘉手納、三沢、岩国の各基地から戦闘機(F15など)訓練が移転されます。有事のさい米国からの物資輸送などにも使用されます。

 「中間報告」直後から基地周辺の新富町、西都市、佐土原町、木城町、高鍋町の一市四町の首長がいっせいに「これ以上の騒音は耐えがたい」と反対を表明。五自治体の首長と議長で「反対対策協議会」を結成し、各議会も反対決議や意見書を可決しています。

 本紙のインタビューに応じた川越俊宏・新富町長は「爆音などさまざまな課題を抱えながらも自衛隊とは円滑にやってきた。しかし、米軍が来てこれ以上の騒音や事故の不安を受け入れられるのか。国の政策も理解できるが、町長としては受け入れるわけにはいかない。反対の意思は固い」と語ります。

 「これまでの基地の機能と質が違ってくるということですよ」というのは同町議会基地対策特別委員会の倉永芳明委員長。「一時的な訓練や使用ではなく、米軍の常駐化につながる不安を住民は感じ取っているんです」といいます。

 防衛施設庁は「(今回の米軍再編による)米軍の常駐化はない」といいます。しかし、十月初旬、議会として沖縄を視察した倉永委員長は「沖縄では国と米軍が結んだ協定さえ守られていない。事件事故が起きても警察権は及ばない。昨年のヘリ事故では警察も消防も現場に入れなかった。一体政府の言葉をだれが信じますか」といいます。

 二十日投票の新富町議補選に立候補している日本共産党前町議の吉田貴之候補(50)は、「力を合わせてたたかえば、国を追いつめ計画を撤回させることができる。町民の暮らしと平和を守るその先頭にたって頑張りたい」と訴えます。

■広く署名訴える

 爆音に我慢を重ねてきた「基地の街」に広がる自治体、議会、住民一体の反対――。区長会は全有権者から反対署名を集めることを全員一致で決定しました。前出の原田区長会会長はいいます。

 「今の世の中を見ていると何か大きく変わろうとしている。改憲の動きも考えると、自衛隊と米軍が海外で戦争をやるのではないかと心配なんです。そういう不安と今回の問題は結びついている。私は戦争を体験した最後の世代。爆撃で真っ赤に燃えた日本軍の基地の光景は今も忘れられない。戦争は絶対起こしてはいけない。だから反対。署名も最後の最後の一人まで集めて回ろうと考えているんです」


■「古代ロマンの街」なのに

■西都(さいと)市 橋田和実市長

 新田原基地の滑走路の延長上に西都市の市街地があります。実は私の家も飛行コースの斜め横ぐらいにあって今でも騒音がすごいんですよ。

 市は「スポーツランド」構想を掲げて、プロ野球のキャンプを誘致したり、九州規模のスポーツ大会を開いています。ところが、戦闘機が通ると、指導者の声も聞こえない。市民はそうした騒音をこらえながらやってきました。そこに米軍の訓練移転。爆音の増大、被害地域がもっと広がることになる。

 一九八六年には自衛隊機が墜落し、乗員と住民の四人が死傷する事故もおきました。そういう苦い経験もあります。米軍がくるということはこうした事故の可能性がいっそう高くなるということです。住民の安心安全という点からいっても賛成できません。

 新田原基地ではこれまで日米の合同訓練をやってきました。自衛隊の力量をアップさせることが目的でした。しかし、今回の米軍再編は機種の単なる変更ではない。F15などの戦闘機の訓練の移転に加えて、有事における基地使用も明記しています。戦闘状態のときに新田原基地をその後方支援基地として使うということでしょう。基地機能が根本的に変わってくるし、訓練も当然激しさを増すでしょう。

 西都市は「古代ロマンの街」といわれるほど、古代の遺跡や文化、水が豊かです。住環境に恵まれている。しかし、騒音被害でそれが生かされない。自治体にとって大事な街づくりそのものがいっそう困難になってしまいます。私は西都市が持っている「うるおい、やすらぎ、いやし」を生かしたい。

 基地周辺の自治体がいま力を合わせて反対することが大事です。国の立場は理解できます。しかし市民を守るのが私の使命です。


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