2005年11月16日(水)「しんぶん赤旗」
CIA秘密収容所
W・ポスト報道に波紋
情報漏えいと悪事の暴露
【ワシントン=山崎伸治】米中央情報局(CIA)が拘束したテロ組織アルカイダの構成員を東欧にある旧ソ連時代の収容施設跡に送り込んでいると報じた二日付の米紙ワシントン・ポストの記事が、その後も波紋を広げています。
米政府は「情報活動にかかわりかねない問題にふれる」(ハドリー大統領補佐官)として「ノー・コメント」を繰り返していますが、保守派は、同紙が国家安全保障にかかわる情報を公表したとして攻撃しています。
保守派のラジオ解説者ウィリアム・ベネット氏は米誌『ナショナル・レビュー』(電子版)で、「ワシントン・ポストはCIAの秘密の活動にかんする機密情報について記事を載せてもよいのか」と指摘。同紙がイラク戦争をめぐるCIA情報漏えい事件でホワイトハウスを追及するなら、今回の「漏えい」についても追及すべきだと皮肉っています。
フリスト共和党上院院内総務は十日、「私が懸念しているのは、情報の漏えいがみなさんの無事と安全を台無しにすること、それだけだ」と強調。同氏の要求もあって、下院の情報委員会が調査の開始を発表しました。しかし問題となっているのは、同紙がすっぱ抜いたCIAの秘密活動ではなく、情報の「漏えい」についてです。
一方、今回の報道を歓迎しながらも、同紙が「当局者からの要求」で、記事の中で問題の東欧諸国の名前を明かさなかったことについては批判するという見方もあります。
民間団体「国家安全保障公文書館」のピーター・コーンブル氏は同紙十四日付で「そうした当局者の議論に屈した結果、この問題を表ざたにできたという側面もある」と指摘。同時に、国名を明かさせなかった「当局者」とそれに屈した同紙を批判しています。
人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは三日、「独自の調査」の結果として、該当する東欧諸国がポーランドとルーマニアであると公表。CIAが拘束した人たちの移動に使う飛行機の飛行記録からわかったとしています。
政府当局者からの情報提供に危険が付きまとうことは、イラク戦争をめぐる政府の情報操作をみても明らか。しかし同時に、政府が秘密裏に行っている悪事を暴くこともマスコミには問われています。ワシントン・ポストの記事をめぐる議論はそのことに改めて光を当てています。