2005年11月15日(火)「しんぶん赤旗」
主張
公務員削減
福祉と雇用の悪化につながる
経済財政諮問会議(議長・小泉首相)が、公務員数と人件費の削減指針を決めました。
今後五年間に国家公務員を5%純減、十年間で総人件費をGDP(国内総生産)比で半分に減らすなど、小泉内閣は大幅な公務員・人件費減らしに乗り出そうとしています。
■日本の公務員は少ない
小泉内閣が公務員を削減する理由にしているのは、「小さな政府」を実現するためだということです。
「小さな政府」と何度も繰り返されれば、日本は公務員が多い「大きな政府」だと思い込まされがちですが、実態は違います。
総務省の調査によると、人口千人あたりの公的部門の職員数はフランス九十六人、アメリカ八十人、イギリス七十三人などと比べて日本は三十五人と半分以下にすぎません。アメリカは軍人・国防関係者を除いても七十三人で、日本の倍以上です。
公務員問題を論議した十月の財政審(財務相の諮問機関)では専門家が次のように報告しています。「総務省やOECD(経済協力開発機構)など、多くの資料が日本の公務員数は少ないことを示している」
国と地方の公務員の総人件費も、GDP比による比較で、日本は主要国の中で最低となっています。国家公務員の総人件費は、二十年前とほぼ同じ金額に抑えられています。
この事実を経済財政諮問会議で目にした小泉首相は、「人件費を相当削減していることは事実だ」とのべています。
日本を公務員の数、総人件費で「大きな政府」のように言うのは誤りです。ただし、国家公務員の四割を自衛隊と防衛庁職員が占めています。政治家や業界と官僚との癒着がはびこり、高級官僚は天下りや巨額の退職金で甘い汁を吸っています。重要なのは、こうしたムダ遣いや腐敗に正面からメスを入れることです。
ところが、小泉内閣が進めている公務員攻撃のねらいは、国民向けサービスに直結する教育や福祉、中小企業を支える施策を削り、関係する公務員を減らすことにあります。
日本経団連会長の奥田碩・トヨタ自動車会長ら経済財政諮問会議の民間メンバーは、少子化による人口減少社会では「小さな政府」でなければならないと主張しています。しかし、国民向けのサービスを切り捨てる公務員削減は、「安心して産み育てられる社会」に逆行します。
公務員の賃下げは民間労働者の賃金にも悪影響を与えます。人事院勧告で公務員給与が凍結・削減された年の翌年は、春闘相場も落ち込んでいます。リストラによる民間賃金の抑制が公務員給与を抑え、さらに春闘相場に波及する悪循環が表れています。
小泉内閣の下で約二百五十万人の正社員が、労働条件で格差が大きいパートや派遣など非正社員に置き換えられ、雇用者に占める非正社員比率はついに三割を超えました。会社に残ることができた正社員も過密・長時間労働に苦しめられています。
国民多数が低賃金や過酷な労働という大きな苦難に直面しています。
■苦難の大もとに反撃を
公務員の雇用悪化は国民全体の雇用をいっそう悪化させます。
「国も身を削っているのだから」と、政府が消費税・所得税の大増税を国民に納得させる口実に利用しようとしていることも見逃せません。
小泉内閣と財界は、公務員と民間労働者の対立を誘っています。いま必要なのは、こうしたやり方を打ち破り、互いに連帯して、苦難の共通の大もとに反撃することです。