2005年11月12日(土)「しんぶん赤旗」

主張

生活保護見直し案

生存権保障の“削減”は撤回を


 生活保護制度は、憲法二五条に明記された「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を国民に保障するための最後のよりどころです。国民の所得の格差が拡大し、生活に困る人が増えるもとで、生活保護の役割がいっそう重要になっています。

■国の責任の後退

 ところが、厚生労働省は「三位一体改革」をめぐる地方自治体との協議の場で、生活保護にかかわる国の責任を後退させる「見直し案」を出してきました。生活保護費の国庫負担を現行の四分の三から二分の一に削減し、住宅扶助などについては国庫負担を廃止し一般財源化するというものです。母子家庭などに支給する児童扶養手当についても、国庫負担を現行の四分の三から二分の一に引き下げます。

 生活保護法は、憲法二五条の理念に基づき、「国が生活に困窮するすべての国民に対し」必要な保護を行うとして、国が第一義的に責任を負う制度であることを明記しています。

 国庫負担の削減が、憲法と生活保護法の精神に反することは、明らかです。

 厚生労働省案は国が負うべき財政負担の地方への転嫁にすぎません。

 地方関係団体が、厚生労働省案の撤回と国庫負担割合の堅持を求めているのは当たり前のことです。

 生活保護と児童扶養手当の国庫負担の見直しは、厚生労働省の“単独行動”とみることはできません。昨年十一月の政府・与党合意で、“見直しについては、地方との協議機関で〇五年秋までに結論を得て、〇六年度から実施”を決めているからです。小泉内閣と、自民党、公明党が一緒になって、生活保護と児童扶養手当にかかわる国の責任を後退させようとねらっているのです。

 しかも、小泉内閣がすすめる生活保護制度の改悪は、国庫負担の切り下げにとどまりません。

 七十歳以上の人に生活保護費を上積みする「老齢加算」の廃止を、二〇〇四年度から〇六年度までの計画で実施しています。さらに、ひとり親の生活保護世帯の保護費に上乗せしている「母子加算」について、十六歳から十八歳(高校生)の子どものみを養育している家庭は対象からはずし、三年間で段階的に廃止する計画を今年度から実施しています。

 日本共産党国会議員団は、生活保護費、児童扶養手当の国庫負担引き下げ案の撤回を求める申し入れで、「老齢加算の廃止、母子加算の削減をやめ、生活保護費を拡充すること」を併せて求めました。

 安倍官房長官は、“国と地方の協議が調わなかった時は、生活保護費を除いた改革案を考えてほしい”とのべています。その一方で、厚生労働省に国の補助金削減額を五千四十億円以上とするよう割り当てています。厚生労働省の担当分野は、福祉や医療、子育てにかかわる分野です。

 生活保護費を除いた「改革案」といっても、住民の暮らしや権利にかかわる自治体の仕事の財源を保障する制度の改悪につながるものばかりです。

■生活保護の役割は重要に

 厚生労働省の見直し案は、「地方にできることは地方に」とともに、「公助から共助、さらに自助へ」をうたい文句にしています。小泉内閣による弱肉強食の政治が、生活保護の必要性を高めているのに、自立自助を徹底せよという冷酷さです。

 生活保護制度の改悪を許さず、国民の生存権保障としての制度の改善を求める運動を大きく広げるときです。


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