2005年11月10日(木)「しんぶん赤旗」
軍の駐留、1年延長
安保理決議 米主導の占領続く
イラク
【ワシントン=山崎伸治】国連安全保障理事会は八日、今年末までの予定だった米主導のイラク駐留多国籍軍の任期を一年間延長するとした決議一六三七を全会一致で可決しました。これによって、十二月十五日のイラクの総選挙後も米主導の占領体制が続くことになります。
決議は、「イラク国民・政府への支援で国連が引き続き指導的役割を果たすべきだ」と確認。また、多国籍軍の「すべての部隊が国際人道法を含む国際法に従って行動する」よう求めています。
決議は一方で、来年六月十五日までに任務を見直し、イラク政府からの要求があれば、それ以前にも駐留を終了するとしています。
イラクには現在、米軍十五万七千人、それ以外の「有志連合国」軍二万二千人が駐留しています。
イラクのジャファリ首相は先月、国連安保理あての書簡で多国籍軍の駐留一年延長を要請し、その理由として「イラク治安部隊が治安責任を引き受けるための訓練や装備を整えるまで、さらに時間を要する」と述べていました。これを受けてデンマーク、日本、ルーマニア、英国、米国が決議案を共同で提出していました。
米国のボルトン国連大使は、決議が全会一致で採択されたことを「イラクの(政治)プロセスに国際社会が関与するという重要な意味」をもつと称賛しました。
一方、安保理での討議でフランス代表は、外国部隊の駐留が「一時的性格」のものだと指摘。決議が定めた多国籍軍の任期は「時間を区切った」ものであり、「逆の決定がなされない限り来年末に期限が切れる」と強調しました。
ロシア代表は、決議作成にあたり、主権尊重の原則や、イラク諸勢力の和解を促進する国民的対話の必要性を盛り込むことが重要だと強調したと述べました。
■イラク国民は占領反対
昨年六月に採択された安保理決議一五四六は、イラクの憲法に基づく来月十五日の総選挙で正式政府が樹立される「政治プロセスの完了」によって多国籍軍の「任務は終了する」としていました。その任期切れの二カ月近くも前に駐留延長が決まったことで、総選挙で誕生する新政権の意思のいかんにかかわらず占領体制が継続することになりました。
イラクでは占領軍への武装抵抗と「武装勢力の一掃」を口実にした民間人を巻き込む米軍の軍事作戦、国際テロ組織ともつながる勢力のテロなどがあいまって、治安が極度に悪化しています。イラク政府が多国籍軍の駐留延長を求めた一方で、「多国籍軍駐留に強く反対する」国民は82%に達しています(英国防省の世論調査)。
こうしたイラク国民の意思に基づいて、復興を進め、決議にいう「国連が指導的役割を果たす」ためには、米占領軍のすみやかな撤退に向かう措置こそが求められています。(山崎伸治)