2005年11月7日(月)「しんぶん赤旗」
台湾ハンセン病訴訟 国控訴方針
支援者ら強く抗議
戦前、韓国小鹿島更生園と台湾楽生院に強制収容された入所者が「ハンセン病補償法」に基づく補償を求めた裁判。八日の控訴期限を前に厚生労働省が「台湾訴訟」(国側が敗訴)の控訴の方針を固めたことに支援者たちから一斉に抗議の声が上がっています。
「戦後六十年たってもいまだに属国思想を持ったままだ」と怒りをあらわにするのはハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会事務局長の國本衛さん(79)。「『韓国訴訟』で不当判決を聞いたときには怒りで震えました。『台湾訴訟』で勝訴し、望みがつながりましたがそれも控訴する。小泉首相が靖国参拝を続け、侵略戦争を正しかったとする流れと一致したもの」と批判します。
「ハンセン病回復者と北海道をむすぶ会」代表の井上昌和さん(41)は「日本はさらなる過ちをおかすことになる。日本人として恥ずかしい。政府は補償法とは別枠の低い補償額で解決しようとしています。これは同じ被害者に差別を持ち込むもの」といいます。
判決後に北海道ではがきでの要請、宣伝や集会を開き全面解決を訴えている井上さん。「最後まで運動を強めたい。強制隔離は違憲だとした熊本地裁判決のときも、控訴断念を決めたその日まで『控訴の方針』と報道されていました。あきらめない」
ハンセン病問題に市民レベルで取り組む「ハンセン病市民学会」運営委員の由井久志さん(32)は「この国は、間違いを間違っていたと表明できない国だ」とあきれます。
「控訴して少しのお金で和解をしようなど本当に姑息(こそく)です。韓国、台湾の被害者たちは『お金をよこせ』といっているのではありません。心からの謝罪を求めています」
たびたび来日するのは困難な原告。「日本の支援者の役割が大きい」と由井さんはいいます。
「私自身が熊本地裁判決までハンセン病問題を知らなかったし、朝鮮や中国などアジアの国への侵略について深く認識できていませんでした。そうした反省にたって、一人ひとりの国民が控訴させないための声を上げる必要があると思っています」