2005年11月6日(日)「しんぶん赤旗」

主張

ハンセン病訴訟

国は控訴せずただちに補償を


 台湾と韓国のハンセン病療養所の元患者が、日本政府に、日本国内と同じ補償を求めた二つの訴訟の、東京地裁判決から、八日で二週間を迎えます。

 支援の人々は、日本政府にたいして、原告の訴えを認めた台湾訴訟判決の控訴断念と、韓国の元患者を含めた早期全面解決を求めています。

■平等の原則に反する

 裁判は、二〇〇一年六月に成立した「ハンセン病補償法」の対象に、戦前、日本の植民地支配下にあった韓国や台湾の療養所の入所者が含まれるかどうかで争われました。

 台湾訴訟の判決は、ハンセン病補償法の趣旨について、「国籍や居住地による制限はない」とし、国外施設であることを理由に「補償の対象から除外することは、平等取扱いの原則上好ましくない」として、補償の請求を認めました。

 一方、原告の請求を認めなかった韓国訴訟の不当な判決も、ハンセン病補償法の文言上、国内外で入所者を「区別する明確な根拠が存在しないことは明らか」としています。

 ハンセン病補償法は、日本の強制隔離政策が、患者・元患者に耐え難い苦痛と苦難をもたらした歴史を踏まえ、その精神的損害を慰謝することなどを目的にして制定されたものです。

 厚生労働省が設置した検証会議は、今年三月の最終報告で、「日本国内と植民地における政策の一貫性」を指摘しています。韓国と台湾の療養所入所者の被害は、日本国内以上にひどいものであったとのべています。

 韓国、台湾の入所者を対象から除外する理由は何もありません。

 日本政府による、ハンセン病強制隔離政策は、一九〇七年の「旧らい予防法」制定以来、「らい予防法」廃止(一九九六年)まで一世紀近くに及びました。元患者は、断種や堕胎など言語道断の人権じゅうりんを受け、差別と偏見によって家族やふるさと、社会から断絶された生活を余儀なくされました。

 強制隔離政策にたいし、「人間の尊厳の回復」を求めてたたかいつづけた元患者に、光を与えたのが、二〇〇一年五月の、ハンセン病国家賠償請求訴訟での熊本地裁判決です。

 判決は、ハンセン病の患者と元患者にたいする強制隔離という、誤った政策をとってきた国の責任と、その規定を改廃してこなかった国会の責任を認め、国に賠償金の支払いを命じました。

 熊本地裁判決は、国の控訴断念により確定しました。そして、判決を受けて、国会は、ハンセン病補償法をつくりました。

 当時、熊本地裁判決にたいし、国の動きとして、「控訴して和解」の動きが伝えられていました。しかし、これは、司法による国と国会にたいする断罪という事実をあいまいにし、責任をうやむやにしてしまうものでした。命と尊厳をかけた元患者のとりくみと、日ごとに高まる世論が、行政の壁を突き破り、国を控訴断念に追い込みました。原告と面談した小泉首相も、「心から反省しなければならない」とのべざるをえませんでした。

■解決を引き延ばすな

 韓国、台湾の元患者は、日本国内と同じように補償してほしいと訴えているのです。台湾訴訟の控訴は、「心からの反省」にも反することになります。

 原告らの平均年齢は八十歳を超えています。日本政府は、控訴によって解決を引き延ばす態度をとるべきではありません。


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