2005年11月4日(金)「しんぶん赤旗」
社会リポート
人身売買、売春強要…
外国人パブの女性「助けて」
「興行」業界 自民と関係
「ショータイムはなく、休みもありません。客の隣に座らされ、ホステスをやらされ、『DOHAN(同伴)』を強制されます。アクションを起こして、私たちを助けて」
法務省入国管理局に寄せられた、外国人女性からの「通報」の一つです。同局によると、このような「通報」は現在も続いています(東京入管には九月に三件)。ほとんどは「興行」という在留資格・ビザで入国したが、パブやバーでホステスをさせられている、売春を強要されている――という内容。さらには、裸で踊るよう強制された、パスポートを取り上げられ逃げられない、給料が払われない――。
「興行」は、もともと接客ではなく芸能活動をする外国人芸能人が対象です。この資格で入国した外国人は、二〇〇四年は約十三万五千人。うち六割にのぼる約八万三千人がフィリピン国籍でした。
前東京入国管理局長の坂中英徳氏はこう話します。「『興行』で入国した外国人女性が働く出演先四百四十四件を入管が調査したら、約93%で不正があり、ほとんどの女性はホステスをさせられていた」「テンガイ(客との店外デート)、ドウハンという言葉が定着し、それがイコール売春を意味していることが多い。それはまさに人身売買、性的搾取だ」
■署名運動も
興行資格で外国人女性を入国させるプロモーター(招へい業者)と出演店は業界団体をつくっており、最大の団体は「全国外国人芸能人事業者連絡協議会」(全芸連)。その機関誌によると、全芸連など業界団体は、外国人パブでの接客について「幕間の談笑であり、認められるべき」などと主張。全芸連を中心に業界団体の連合会を結成し、興行資格者(の外国人女性)に認められる「活動範囲の緩和」を求めて署名運動をするなどしていました。
しかし、政府が「人身取引対策行動計画」をつくり、興行ビザの発給要件厳格化などを打ち出すと、「同伴と指名システムの廃止」などを掲げました。その一方、興行ビザ厳格化の見直しを求めて全自民党議員に陳情するなどしました。
全芸連の今井城司理事長(連合会会長)は「業界団体は同伴禁止など業界の浄化に務めている。業界がすべて悪いと見られるのは不本意だ」と話します。
坂中氏は、「(〇五年三月までの)局長在職中、入管では興行ビザでの入国者がいる店の調査を強化した。すると、業者・業界が政治家に影響力を発揮し、入管に圧力がかかってきた」といい、業界と政界の癒着も指摘します。
■自民本部で
全芸連は毎年の総会を自民党本部で開催。機関誌によると、全芸連がことし二月に開いた総会には、保岡興治元法相、山崎拓前副総裁(当時首相補佐官)ら国会議員九人(その後落選した議員含む)が出席し、祝辞をのべています。
〇四年六月の連合会設立総会も自民党本部で開催され、自民党議員約三十人が出席。安倍晋三官房長官(当時幹事長)らが「この総会でみなさんから伺った話を政策に反映させていきたい」などと祝辞をのべました。
今井理事長は、「圧力ではない。入管がわれわれと会おうとしないから、政治家から入管に要求してもらうことはある。業界全体の要求だけだ」と話しています。
▼興行資格と人身売買 日本は、「人身売買監視対象国」(二〇〇四年の米国務省『人身売買報告書』の指定)、「性的搾取のため売買される多数の女性や子どもの目的国」(二〇〇五年同報告書)と国際的に批判されています。政府は人身売買対策として、ことし三月に「興行」資格の発給基準を厳格化。六月には刑法・入管法改正で人身売買被害者に在留特別許可を与え保護する措置が導入され、人身売買罪が新設されました。