2005年11月2日(水)「しんぶん赤旗」

民主党の「憲法提言」

自民案と危険な共鳴


 民主党憲法調査会は三十一日、総会を開き、改憲の焦点となっている九条改定にかかわる安全保障問題を含め「憲法提言」をまとめました。「提言」は三月末をめどにまとめるとされていたもの。十月二十八日に自民党が新憲法案を決定したことから、“遅れ”を少しでも取り戻そうと急いでまとめたものです。

 「提言」の最大の特徴は、「自衛権」を明記することで、憲法九条二項の縛りを解こうとすることにあります。

 「提言」は、「国連憲章上の『制約された自衛権』を明確にする」としました。「制約された自衛権」とは、国連憲章五一条の定める自衛権行使に関する制限を受けるという意味です。国連憲章では、自衛権について「加盟国に対して武力攻撃が発生した場合」は安保理事会が必要な措置をとるまでの間、「個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」としています。

■2項の縛り解く

 個別的自衛権とは、自分の国が攻撃されたら反撃する権利のことです。これに対して集団的自衛権とは、自分の国が攻撃されていなくても、軍事同盟関係などにある国が攻撃を受けたら、ともに反撃できるという権利です。日本に則していえば、「同盟国」米国が攻撃を受けたとき、日本が参戦するということです。「自衛」とは名目ばかりで、海外での武力行使にあたります。

 そのため、戦力不保持、交戦権否認を定めた現行憲法九条二項のもとでは、集団的自衛権の行使は許されないとされてきました。民主党の「提言」は、「自衛権を明確にする」というだけで、個別的か集団的かを区別しないで、この九条二項の縛りを解こうというのです。

 しかも、「提言」はもう一つ、九条改悪の方向を明記しています。

 それは、「国連の集団安全保障活動」の名で海外での武力行使を公然と認めることです。「提言」では、「国連多国籍軍の国連活動や平和維持活動(PKO)への参加を可能にする」とし、「その活動の範囲内においては…武力の行使を含む」と明記しました。

 民主党の「提言」は改憲案の土台となる考え方を示したもの。「九条二項を具体的にどう変えるか」、「軍隊の保持をどう規定するか」などの具体的作業はこれからです。しかし、九条改悪という改憲の最大の焦点で自民党案と共鳴したことは重大です。

■議論加速の役割

 そのほかにも、「提言」は、解釈改憲による憲法の「空洞化」を阻止するとか、憲法を国民の手に取り戻すとか、改憲を合理化する逆立ちした議論を展開しています。しかし、自衛隊と日米同盟の「現実」にあわせて憲法を変えるという議論を粉飾しただけ。世論調査でも国民の多数が反対する九条改憲を強行することが、なぜ「憲法を国民の手に取り戻す」ことになるのか、説明もつきません。

 十月三十一日の総会では、集団的自衛権や国連集団安全保障活動における武力行使への参加に対して異論がだされ、論議の継続も確認されました。しかし、「提言」そのものには反映されていません。

 民主党案は、「九条は日米同盟の障害物だ」という米国の要求にこたえる内容です。改憲論議を加速させる危険な役割をもっています。(中祖寅一)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp