2005年11月1日(火)「しんぶん赤旗」
労働時間規制の適用除外
厚労省研究会が導入議論
厚労省の「今後の労働時間制度に関する研究会」はこれまでに十一回の検討をおこなっています。事務系労働者を際限なく働かせ、残業代や深夜・休日手当を一切支払わない制度(ホワイトカラー・エグゼンプション制度)を強引につくろうとする危険なねらいが鮮明になっています。
二十七日に開かれた第十一回の研究会で「労働時間規制の適用を除外する制度のあり方」が初めて本格的に議論されました。
この制度のねらいについて研究会では、「企業が競争力向上のため専門的知識・高度な技術を有する労働者の能力をフルに活用」(第十回の研究会の資料)するため、としています。これは、国際競争力などを口実に、企業のもうけのために労働者を安上がりで極限まで働かせたいという日本経団連など財界の要求に完全にそったものです。
第十一回の研究会では、この制度の対象となる労働者の年収水準や専門性などをあまりに高く設定すると「(企業にとって)使いにくい制度にならないか、一握りのハイレベルな労働者だけを対象にする制度にならないか」という意見もだされました。
年収四百万円を超えたら対象者という日本経団連の「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」に迎合したものというほかありません。
一方で、この制度導入の口実とされている、「自律的な働き方」を希望する労働者がいるという考えに対し、「『自律的な働き方』といっても、仕事そのものを決めるのはもっと上部の人やトップの人であり、その下でどれほどの自律性が発揮できるのか」との疑問や、「(企業に)時間外労働の規制を免れるための方策として使われるのであれば、非常に問題がある」などと危ぐする声もだされました。
研究会は、年内に報告をまとめようとしています。異論や疑問が出ている現段階でまとめるのは拙速にすぎ、財界の求める結論を出すための研究会となってしまいます。
研究会自身、「正規労働者にはこれまで以上に労働負荷が高まり、年休の消化率が約五割と過重な労働を強いられ、当該労働者の健康問題も課題とされている。また、…いわゆる不払い残業の問題も…依然生じている」(第十回研究会資料)と、労働者に過重労働などを強いている現状にふれています。労働時間法制について検討するのであるなら、過労死をうむ長時間労働やサービス残業の横行を解決することこそ、真剣に論議すべきです。