2005年10月28日(金)「しんぶん赤旗」
主張
普天間基地「合意」
県民不在の負担激増計画だ
在日米軍再編をめぐる日米審議官級協議は、普天間基地(沖縄県宜野湾市)に代わる飛行場を、米軍基地キャンプ・シュワブ(名護市)の兵舎地区を中心に西側の浅瀬と東側の大浦湾にまたがってつくることで合意しました。
大筋で、基地隣接の浅瀬に飛行場をつくるという米政府の要求にそっています。県民の命と暮らしにかかわる問題にもかかわらず、自治体に説明もせず県民をかやの外において決めた日米合意は、県民負担を軽減するどころか激増させるものです。
■集約化で海兵隊強化
政府は、一九九九年に辺野古沖を新基地建設地と決めました。しかし、県民は、座り込みや作業阻止のための海上行動など粘り強い反対運動で、断念に追い込みました。命と自然は沖縄の宝です。沖縄県民の意思を尊重して、日米両政府は新基地建設計画をやめるのが筋です。
米政府が持ち出した浅瀬案は、沖縄の自然も、住民の命も暮らしも無視するもので、県民の感情を逆なでするものでした。ジュゴンの餌となる藻場を奪い、住宅地域に接近することによって、航空機騒音と墜落の危険を住民に強いるからです。
これにたいして、日本政府は、兵舎地区から東側の大浦湾につきだす形で飛行場をつくる案を出しました。辺野古沖側では、県民の反対で再び中止に追い込まれる可能性が大きいので、反対の人たちを排除しやすい場所にしようということです。あくまでも新基地を建設することに変わりありません。
合意内容は、日米両案を折衷する形をとったとはいえ、米案を基礎にしたものです。浅瀬の藻場を破壊し、ジュゴンの生息を脅かすだけでなく、東西にあるいくつもの集落に、騒音と墜落の危険を強いるものです。
米国防総省は、日米協議のなかで、キャンプ・シュワブに隣接した形の飛行場建設に異常なほど固執しました。これは、米軍再編方針にそって、沖縄海兵隊の機能をさらに強化する狙いがあるからです。
同省のヒル日本部長は、沖縄県庁を訪れた際、海兵隊司令部と後方支援部隊をグアムに移すが、「残りの部隊を北部に集約したい」とのべました。北部地域を海兵隊の一大軍事要さいに変える構想です。那覇軍港と牧港補給地区の兵たん集積機能も北部に集約されます。
新基地ができれば、ヘリ部隊、固定翼機部隊、二〇一二年から配備される最新鋭機オスプレイを持つ強力な航空拠点となります。米軍の活動は、住宅地域に囲まれた普天間基地とは比べものにならないほど無制限なものになるでしょう。
地上戦闘部隊の輸送をはじめ、海兵隊の出撃能力の飛躍的な強化になります。
■広がる反対運動
日米両政府の合意内容にたいして、沖縄県民を中心にした抗議の声が広がり、反対運動はさらに強まっています。地方自治体の反発も強まっています。
米軍再編にかんする日米合意は、沖縄米軍基地の再編強化にとどまりません。厚木基地の空母艦載機部隊を岩国基地に移転・統合し、キャンプ座間の戦闘司令部を新設するなど米軍基地を再編・強化するとともに米軍と自衛隊の一体的運用に道を開きます。これは、日米軍事同盟を侵略的に大きく変質させるものです。日本とアジア、世界の平和に逆行するものであり、絶対に反対です。
普天間基地撤去、無条件返還を求める運動を広げていきましょう。