2005年10月27日(木)「しんぶん赤旗」

正式政府樹立へ新段階

対立も深刻、米撤退課題に

イラク憲法草案承認


 イラクの国民投票で憲法草案が八割近くの賛成で承認され、米軍の占領下にあるイラクは十二月十五日の国民議会総選挙と正式政府樹立に向け、新たな段階に入りました。

 国連安保理決議一五四六は、正式政府発足による政治プロセスの完了をもって多国籍軍の任務は終了するとしています。正式政府が樹立されれば、米政府が長期のイラク駐留を公言している米軍の問題は新たな論議の対象になります。

 今回の投票率は約63%で、今年一月の暫定国民議会選挙の約58%を上回りました。米軍の占領とテロを早期に終わらせたいという国民の願望が反映した結果ともいえます。英国防省の秘密世論調査では、イラク国民の82%が多国籍軍の駐留に強く反対していました。

 国民投票の結果は一方で、イラク国民のなかに将来の国家像をめぐり深刻な対立があることも浮き彫りにしました。

■連邦制で対立

 憲法草案に明記された連邦制について、これに賛成のイスラム教シーア派(人口の六割)、クルド人(同二割弱)勢力と反対のスンニ派(同二割)勢力との間で激しい論争、対立が生じました。スンニ派が多数の西部アンバル州で約97%、北中部サラハディン州で約82%が草案に反対したことは、統一した国づくりにとって大きな課題を残しました。

 豊富な石油資源を抱える南部シーア派や北部クルド人が「独裁によらず国家を維持するのに不可欠」と連邦制を主張したのにたいし、資源を持たないスンニ派は「国家分裂をもたらすものだ」と強く反発しました。

■修正論議先送り

 憲法草案は、連邦を構成する地方政府が独自憲法や治安部隊を保持すると規定するなどかなりの独立性を認め、スンニ派の主張に一定の根拠を与えています。

 ただ、草案承認は連邦制についての修正論議を正式政府成立後に先送りした上でのことです。今後、連邦制の問題の解決が課題となります。

 ブッシュ米大統領は憲法承認をうけ、「イラクの歴史にとって画期的な日」(報道官)とのべ、米軍のイラク占領を正当化する印象を振りまこうとしています。しかし、その裏で米軍は投票日の直前まで、「武装勢力掃討」を理由にイラク北部と西部のスンニ派地域で無差別軍事攻撃をおこないました。その結果、西部アンバル州の投票率が約32%と極めて低くなったように、少なくない国民が投票から排除されました。

 この国民投票の結果が実際にイラクの民主的な国づくりに結びつくかどうかは、国民融和に向けたイラク人自身の今後の動きと、なによりも米軍の撤退にかかっています。(伴安弘)


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