2005年10月27日(木)「しんぶん赤旗」

沖縄 米軍新基地合意

安全も環境も“最悪の案”


 今回の日米合意は、老朽化した普天間基地に代わる最新鋭の軍事基地の建設を、現行の名護市辺野古沖での計画が行き詰まったにもかかわらず、またしても辺野古に押しつけようというものです。(田中一郎)


 日米協議の「難航」が伝えられましたが、両者の案の違いは、辺野古周辺での若干の位置の違いでしかありません。

 日本側は当初、シュワブの内陸部に建設する案を示していましたが、米側がシュワブ沖リーフ(環礁)内の浅瀬を埋め立てて建設する案(浅瀬案)に固執。これに譲歩した日本側は、シュワブ沿岸部の兵舎地区を中心に、滑走路が海上に突き出た形で建設する案(沿岸部案)を提示しました。これにも米側は難色を示したものの、結局、大筋で同意しました。

■県民カヤの外

 日米協議の中で、米側は、沿岸部案について「ヘリコプターの飛行経路が民家の上空にかかるなど、運用・安全面で問題がある」と主張。日本側は、海上の埋め立て計画について「サンゴ礁、ジュゴンの生息地である場所に造るのは難しい」(守屋武昌防衛事務次官、二十四日)と主張していました。この経過を見れば、今回の合意が日米両案の危険を併せ持ち、安全面からも環境面からも“最悪の案”であることは明らかです。

 それでも日米両政府が合意を急いだのは、在日米軍再編に関する「中間報告」を二十九日の2プラス2(日米安全保障協議委員会)で発表するため、普天間問題の「月内決着」という政治日程をなによりも優先させたからです。

 日米両政府は、普天間問題をめぐるこの十年の歴史からいったい何を学んだのか―。

 一九九五年の米兵による少女暴行事件を契機に、沖縄は島ぐるみで「基地のない平和な沖縄を」の声を日米両政府に突きつけました。これに衝撃を受けた日米両政府は、沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)最終報告(九六年)で、普天間基地を「返還」させる代わりに、県内への新基地建設方針を打ち出しました。

 この路線に基づき名護市辺野古沖への建設を推進したものの、結局、県民の強い批判を浴びて頓挫。これを受け日米両政府が今回合意したシュワブへの建設案は、SACOの作業の中で検討され、住民生活や自然環境への影響が大きいことから否定されていたものでした。

 戦後六十年もの間、基地の重圧に苦しめられ、普天間基地の「県内たらい回し」に反対する沖縄県民の声は、今回もまったくカヤの外に置かれたのです。

■米戦略の拠点

 防衛庁の守屋次官は「海兵隊の機能を維持できる飛行場をつくりたいということでは、日米に考え方の差異はない」(二十四日)と述べました。

 新たに基地を建設し、「機能を維持」するという普天間基地とはどんな基地なのか。

 昨年八月に普天間基地に配備されていた大型輸送ヘリが、沖縄国際大学に墜落しました。事故機は、イラク作戦への出撃準備中でした。事故が示したのは、県民を死の恐怖に突き落とした普天間基地が、ブッシュ米政権が進める先制攻撃戦略の拠点になっているということです。

 世界で無法な戦争を引き起こし、自国の国民の命も、アジアの人々の命も脅かす他国の軍事基地を恒久化し、その最新鋭化を進める政府が、いったい世界のどこにあるというのか。しかもその費用は、日本国民の税金で負担させようというのです。

 なぜ、政府は撤去を求めないのか。アジアや世界の平和にも背くこの計画が、内外世論の批判を浴び、再び破たんに追い込まれることは避けられません。


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