2005年10月27日(木)「しんぶん赤旗」
主張
定率減税廃止
サラリーマンをだまし討ち
政府税制調査会(首相の諮問機関)が総会を開き、来年度の税制改定に向けた議論を開始しました。
石弘光・政府税調会長は総会後の記者会見で、「景気を理由に定率減税の廃止を延ばすという根拠はない」と断言しました。所得税・住民税の一定割合を差し引く定率減税について、議論を始める前から「廃止ありき」という姿勢です。
■明白な公約違反
政府税調が六月に打ち出した「サラリーマン増税」には、国民やマスメディアから大きな批判が巻き起こりました。「サラリーマン増税」の筆頭に掲げられていたのが総額三・三兆円の定率減税の廃止です。
自民党は総選挙で武部幹事長らを先頭に、「サラリーマン増税を許さない」と宣伝し、政権公約にも書き込んでいます。
財務省の元幹部も「自民党は明確に『サラリーマン増税』は行わないという政策を掲げ」、それが「自民党大勝の大きな原因」になったと指摘しています(斎藤次郎・元大蔵事務次官、『中央公論』十一月号)。
それにもかかわらず、選挙が終わったとたんに谷垣財務相が定率減税廃止の方針を公言。小泉首相は国会で、増税の対象はサラリーマンだけではないから、「サラリーマン増税とは異なる」と答弁しました。
石会長は「サラリーマン増税という言葉は一回も使っていないし、そういう意識もない」とのべ、国民の批判をかわそうとしています。
こうした詭弁(きべん)や言い逃れは通用しません。増税対象の大半はサラリーマンであり、会社の収益強化の犠牲で賃下げ、過酷な労働と雇用不安にさらされているサラリーマン層を直撃する増税だからこそ、これほど怒りが沸騰したのです。
定率減税の廃止は明白な公約違反であり、サラリーマンをだまし討ちにする行為です。
石会長は景気「回復」を定率減税廃止の理由にしています。大企業は過去最高益を更新し、業績を回復させています。しかし、定率減税の対象であるサラリーマン、庶民の家計は、回復とは程遠い状態です。
総務省の家計調査(四―六月期)によると、サラリーマン世帯の手取り収入は、二〇〇〇年の水準を下回り続けています。景気の実態を見ても、定率減税を廃止できる情勢ではありません。
政府税調は来春に期限が切れる大企業向けの研究開発減税「上乗せ」措置とIT(情報技術)投資減税の存廃を議論するとしています。廃止したとしても、研究開発・IT投資減税の総額一・二兆円を半分に圧縮する程度です。
何より、定率減税と同様に「恒久的減税」として引き下げた法人税率や所得税の最高税率に対しては、聖域のような扱いです。
■本末転倒の税制
社員や下請け企業を締め付けて大もうけをあげている大企業の法人税率は引き下げたまま。所得税の最高税率引き下げによって、高額納税の上位百人に一人当たり二億円を減税している計算になりますが、これもそのままです。
こんな不公平があるでしょうか。
政府税調は、低税率・低価格で庶民の支持を集めている「第三のビール」の増税も狙っています。
政府・与党は消費税増税についても、税率の引き上げ幅を含めて具体的な議論に乗り出そうとしています。財界は、この機会に法人税をいっそう減税するよう求めています。
財界栄えて社員と国民が滅ぶような税制は、本末転倒です。