2005年10月26日(水)「しんぶん赤旗」

大企業には負担求めず

庶民には大増税の嵐

来年度税制「改正」議論

これが小泉「改革」


 なぜ、小泉政治は庶民にだけ負担を求めるのか―。二十五日、二〇〇六年度税制「改正」に向けて本格的議論を再開した政府税制調査会(首相の諮問機関、石弘光会長)。議論の焦点は、所得税・住民税の定率減税の全廃や「第三のビール」増税など庶民大増税です。一方、大企業減税については、財界が継続を強く迫っています。(山田英明)

■定率減税は全廃の方向

 「今年の税制『改正』で半分やった。景気もだいぶ良くなってきたので、今年の後半も(定率減税の残っている)半分(の廃止)もやらないといけない」。谷垣禎一財務相は二十三日放映のテレビ朝日系番組「サンデープロジェクト」に出演し、こう明言しました。

 一九九九年度税制「改正」で景気対策として導入された所得税・住民税の定率減税。すでに政府は、その半減を決め、二十五日から本格化した〇六年度税制「改正」議論で全廃の方向を決める構えです。同じく九九年度税制「改正」で実施された大企業減税(法人税率の引き下げ)や高額所得者減税(所得税の最高税率引き下げ)の見直しについて、政府は議論の対象にしようともしません。

 仮に定率減税が全廃されれば、総額で三・三兆円の負担増が国民を襲うことになります。

 景気は「緩やかに回復している」(月例経済報告)から、「(定率減税全廃を)やれる状況になっている」(谷垣財務相、九月二十三日)というのが政府の言い分です。

 しかし、「回復」しているのは、一兆円を超える最終利益(三月期決算)を二期連続で上げたトヨタ自動車など、史上空前の利益を更新している一部大企業だけです。

 民間企業に勤める人の平均給与が七年連続で減少(国税庁、給与実態統計調査)するなど、家計は依然として低迷しています。

 家計には負担を求め、空前の大もうけをあげている大企業には、もうけ相応に負担を求めようとしないのが、小泉内閣です。

■財界の要求際限なし

 財界・大企業の要求はとどまるところを知りません。

 「引き続き整備・拡充することが不可欠」。日本経団連の〇六年度税制「改正」に関する提言は、研究開発・IT(情報技術)投資促進減税の継続・拡充を政府に求めました。

 企業の試験研究費総額の一定割合(10―12%、法人税額の20%が上限)を法人税額から差し引くことができる研究開発減税。IT投資費用の10%を法人税から差し引くことができるIT投資促進減税とともに、大企業を優遇する制度です。

 両減税はそれぞれ時限措置として、〇六年四月から、研究開発減税は現在2%上乗せして10―12%になっている控除割合を8%―10%に引き下げ、IT投資促進減税は廃止されることが決まっています。

 しかし、日本経団連はこの継続を強硬に主張。経済産業省もその延長を求めています。

■マスコミも疑問の声

 大企業優遇税制を継続するか、しないか―。税制「改正」議論の焦点となっています。

 東京新聞は二十一日付三面で、「定率減税縮小なのに…/法人税減税継続?」という見出しの記事を掲載。この中で、「定率減税が全廃されれば、個人の税負担は最大で年二十九万円増える。こうした中で、企業だけを特別扱いできるものなのか」と疑問を呈しました。

■ささやかな楽しみ

■「第三のビール」増税も

 〇六年度税制「改正」の中で狙われる庶民増税は、定率減税全廃だけではありません。

 谷垣禎一財務相は十八日の会見で、酒税の見直しについて、「酒類間の細かな(税率適用)区分を見直して全体を簡素化していく方向で議論が進んでいくだろう」との見通しを語りました。原料にエンドウマメなどを使った「第三のビール」の税率アップが狙われています。

 現在の酒税法は、原料や製法によって酒類を、「清酒」「焼酎」「ビール」など十種類に区分。異なる税率を適用しています。政府は、〇六年度税制「改正」で、この区分を三―四種類に簡素化し、同一区分の商品に適用する税率の格差を縮小する方向で検討しています。

 低価格が消費者にうけ、売り上げを伸ばす「第三のビール」。“取りやすいところから税金を取る”政府のたくらみは鮮明です。

■「消費税増税は避けられない」

■政府のシナリオ鮮明に

 谷垣禎一財務相は二十三日のフジテレビ系報道番組「報道2001」で、消費税増税について「(〇六年九月で自民党総裁の任期が切れる小泉首相の後を継ぐ次期首相が)誰になっても避けて通れない道だ」と語りました。

 総選挙直後から、「〇七年度(税制『改正』の議論)の中で、消費税等々も考えていく」(九月十三日の記者会見)と明言する谷垣氏。定率減税全廃を〇六年度税制「改正」議論で決め、年明けからはじまる〇七年度税制「改正」議論で、消費税増税を議論し、同年秋には結論を出す構えです。

 同番組でも、谷垣氏は「いくら歳出を圧縮しても、出る方をカットするだけで(財政を)立て直していくのは率直に言って不可能だ」とのべ、「(消費税増税を)お願いしないといけないときが必ずくる」と強調しました。

 自民党の財政改革研究会(会長・与謝野馨政調会長)では10、12、15%という具体的な税率も含めた消費税率引き上げの論議がすすんでいます。

 税制「改正」議論と並行して行われる〇六年度予算編成で焦点になるのは、社会保障改悪などの歳出削減です。具体的には、高齢者の医療費自己負担引き上げなど、医療改悪が狙われています。

 “歳出削減で国民を徹底的に痛めつけた後に、消費税を増税する”。政府のシナリオが浮き彫りにされてきています。

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