2005年10月26日(水)「しんぶん赤旗」

主張

米国産牛肉輸入問題 

安全性の疑問残したままでは


 BSE(牛海綿状脳症)発生(二〇〇三年十二月)に伴って輸入禁止とした米国産牛肉。日米両政府が、特定危険部位を除いた二十カ月以下の牛について輸入のための手続きに入ることで合意してから一年がたちました。

 米政府は、一日も早い輸入再開を日本に迫っています。日本政府は、「輸入再開については現在、食品安全委員会で審議中であり、その結論に委ねたい」(岩永農林水産相)としています。

■政府の暴走に歯止めを

 今年五月に厚生・農水両省から諮問を受けた食品安全委員会プリオン専門調査会の議論は、米国産牛肉の輸入再開の是非を決する、きわめて重要な意味をもっています。

 日本政府が、輸入条件にあわせて国内の全頭検査を二十一カ月齢以上に改悪(今年七月)するなど、BSE対策を後退させようとしているのにたいし、それに歯止めをかけ、BSE発生国のリスク(危険性)から、国民の食の安全を守る役割があります。

 二十四日のプリオン専門調査会では、答申案の「結論」について議論が行われました。日本で処理される全年齢の牛の食肉・内臓と、米国・カナダの牛を全年齢で危険部位を除去し、二十カ月齢以下という条件で輸入した場合のリスクの比較です。座長が、条件を順守すれば、日米の「リスクの差は極めて小さい」との案を示したのにたいし、委員からは「リスクの差が極めて小さいというなら理由を説明する必要がある」「リスクが同等とはみなしがたい」「同等であるかどうか不明」「米国及びカナダの全体としてのリスクは、わが国より高い」など、異論が相次ぎました。

 危険部位の除去が完全に行われるかどうか、また、牛のトレーサビリティ(生産・流通の経歴が追跡できる仕組み)がない米国で二十カ月齢以下の牛と確実に判断できるのか。疑問が解消できないからです。

 座長案の結論部分も大半をさいて、「今回の諮問では国外という状況のため、米国やカナダの場合は文書に書かれた原則が主体」で「不明な側面もあることを考慮する必要がある」、条件の順守も「守られることを前提に評価した」「前提が守られなければ、評価結果は異なったものになる点を考慮する必要がある」とのべています。

 消費者がもっとも知りたいのは、実際に輸入対象とされる米国産牛肉の安全性です。

 その点が不明なままでは、結論などだせないはずです。条件の順守次第で、「評価結果が異なったものになる」状況で、強引に結論を出すなら、食の安全性は確保できず、国民を不安に陥れるだけです。

■輸入牛にも全頭検査を

 小泉内閣は、BSE対策の国内措置をめぐって、プリオン専門調査会の報告の意図をねじまげて、全頭検査の緩和を打ち出してきました。米国産牛肉の評価についても、国産牛との「リスクの差は極めて(非常に)小さい」などの結論をもって、輸入再開へ導こうとしています。政府は今月末にも答申案のまとめをねらっています。

 米国でのBSE検査は、食肉処理される牛の1%未満にすぎず、検査方法も不十分で、BSEが広がっている危険性が指摘されています。米国産をはじめ輸入牛肉についても、全頭検査、危険部位の完全除去、トレーサビリティの体制をつくり、安全性を確保すべきです。


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