2005年10月25日(火)「しんぶん赤旗」

米海軍は発信源特定し干渉電波帯の削除を

羽田空港の電波障害


 ▼解説 民間機を空港の滑走路に着陸誘導するためのILS(計器着陸装置)は、ICAO(国際民間航空機関)で周波数帯が定められています。

 障害電波の発信源と見られる空母キティホークは、二十四日の出港を控えて各種のメンテナンスを行っており、TACANの精度テスト中に、羽田のILSに干渉したものと見られています。

 電波のテストは電波が発信されないように、アンテナに接続しないで行われます。しかし、米軍のTACANの出力は羽田(一〇〇ワット)の三十倍、三キロワットもあり、専門家は「電波が強力すぎて漏れてしまうのではないか」と語っています。

 羽田のILSは四十―七十キロ程度まで届きます。羽田の場合、ILSの補助装置として千葉・木更津に超短波による全方向式レンジのVOR―DME(方位と距離情報のみ)も設置されています。

 横須賀を母港とする米第七艦隊は、空母キティホーク、揚陸指揮艦ブルーリッジ、タイコンデロガ級イージス巡洋艦にURN―25TACANがマストの最高部に設置されています。空母以外の主要艦にTACANが搭載されているのは、空母に支障が起きた場合や中継艦としての任務があるからです。

 作戦中の空母は敵に位置を知られないためにTACANなどの電波を弱めます。このため、艦載機は有視界飛行でINS(慣性航法装置)や衛星によるGPS(全地球測位システム)を活用し、空母から五十マイル(約九十キロ)内に入ると、空母の管制指示に従って着艦進入します。

 民間機のパイロットや空港の管制官は「瞬時の電波障害は時たまあるが、今回のように長い障害は軍関係しかあり得ない」と話しています。総務省電波管理監視室では、国土交通省航空局の要請を受けて、移動探索車で横須賀方面に向かいましたが、接近する途中で発信が途絶え、突きとめられなかったといいます。

 ただ、発信源がキティホークだとしても、外洋に出てしまうと空港との距離が遠くなって、ILSへの干渉はなくなります。米海軍横須賀基地司令部は「航空の安全にかかわることなので調査する」とのコメントを発表しています。軍使用の周波数は軍事機密であり、発信源を認識しても公表するかどうかは別です。

 米軍は民間航空機の安全を確保するために、ICAOで定められた周波数帯の電波を空港施設に影響を与える距離での使用を控えるべきです。(米田 憲司)


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