2005年10月24日(月)「しんぶん赤旗」
主張
医療「改革」試案
冷酷な“命のさたも金次第”
小泉内閣は、来年の通常国会に医療制度「改革」法案を提出する予定です。その「たたき台」となる「試案」を、厚生労働省が発表しました。
試案は、医療費の伸びを抑えることを第一にかかげ、七十五歳以上の人から新たに保険料をとったり、患者の負担を大幅に増やす中身になっています。高齢者が増えて、医療がますます必要になっているというのに、経済指標にあわせて総額抑制するというのです。
■国民皆保険の根幹崩す
しかし、医療とは何より、国民の命と健康を守るためのものであり、必要とするすべての人に保障されるべきものです。生身の人間を無視して、景気の動向で決めるなどというのは、まったくの暴論です。
試案のなかで紹介されていますが、日本の総医療費の対GDP(国内総生産)比は、OECD(経済協力開発機構)加盟三十カ国中十七位という低い水準です。医療費を経済に比して過大であるかのようにいう根拠はありません。
試案は、生活習慣病対策を柱にすえる一方で、医療費の一定額(外来受診一回当たり千円)までを保険対象外とする「保険免責制度」の導入を持ち出しています。“万病のもと”といわれる風邪などで病院にかかれなくなれば、早期発見・早期治療に逆行し、病状悪化と医療費増につながります。
「国民皆保険制度を堅持する」ためといいながら、「必要な治療は保険で受けられる」という国民皆保険の根幹を崩そうとしています。
「新たな高齢者医療保険制度」の眼目は、これまで保険料負担のなかった被扶養者の高齢者を含め、すべての高齢者から、「年金からの天引き」という方法で、保険料を徴収することです。来年値上げが予定されている介護保険料とあわせると夫婦で月二万円(平均)も年金から差し引かれます。
そのうえ、高齢者医療保険制度は、高齢者にかかる医療費の一割を高齢者の保険料でまかなうため、医療費が増えれば、自動的に高齢者の保険料も上がります。高齢者自ら受診抑制に動くよう仕組んでいます。
通院や入院時の自己負担増も重大です。十月から介護施設の居住費と食費の全額自己負担化が実施されましたが、これを医療施設にも適用します(来年十月実施予定)。
高齢者の窓口負担を現行の一―二割から、二―三割に引き上げるのも必要な医療から高齢者を遠ざけるものです。来年十月実施で三割負担となるのは、現役並みの所得のある高齢者としています。二〇〇六年度実施の公的年金等控除の縮小などに伴い、三割負担の対象者は約百二十万人(七十歳以上の医療保険加入者の約6%)から、約二百万人(同11%)へとほぼ倍増します。高齢者を収入によって、現役並み、一般、低所得者とわけて窓口負担に格差をつけるとしていますが、収入が増えないのに負担だけ増える人がたくさん出てきます。
■命と健康より財界優先
財界・大企業は、医療費の抑制を強く主張してきました。社会保障にたいする企業の税・保険料負担を減らしたいからです。しかし、日本の企業の税・保険料負担は、ドイツの八割、フランスの五割です。財界・大企業の身勝手な要求を優先して、国民の命、健康を切り縮めるやり方には、なんの道理もありません。
日本共産党は、新たな医療改悪計画を阻止するため全力をあげます。