2005年10月23日(日)「しんぶん赤旗」

主張

景気「回復」

裏付けのない「踊り場脱却」


 日銀の福井総裁は二十日の日銀支店長会議で、「景気は『踊り場』から脱却し回復を続けている」と改めて景気回復を強調しました。竹中経済財政相は「企業の好調さが家計に広がっている」とのべています。

 これに対して国民の生活実感はまったく反対の事実を示しています。厚労省の調査によると「生活が苦しい」と答えた世帯の割合が55・8%に達し、過去最悪となっています。

■雇用は改善したのか

 政府・日銀の景気判断が国民の実感と大きくずれているのは、政府・日銀が国民のくらしや雇用の実態を無視しているからです。大企業の業績が好調なのは事実ですが、問題は家計につながる雇用と賃金です。

 雇用が増えたといっても、小泉内閣の「構造改革」によって失業・倒産が急増し、雇用者数が過去最悪に落ち込んだ時点と比べてのことにすぎません。総務省の調査によると、小泉内閣の発足前の雇用者数(役員を除く)四千九百九十九万人に対して、ことし四―六月期の平均は五千一万人と、横ばいです。小泉内閣は雇用を増やしていません。

 この間に雇用の中身は働く側にとって格段に悪化しました。正社員が二百四十六万人も減る一方で、パートや派遣など非正社員が二百四十七万人増加しています。雇用者に占める非正社員の比率は、ついに三割を超えました。パート賃金は正社員の五割にとどまるなど、非正社員の労働条件は、ヨーロッパでは当たり前の均等待遇に程遠い状態です。

 正社員から非正社員に切り替えて人件費を削減する財界方針を、小泉内閣は雇用分野の規制緩和などで忠実に応援してきました。失業者が増え続けていた四年前の経済財政諮問会議で、財界有力メンバーが次のように提案しています。労働者派遣制度や有期雇用契約の規制緩和を進め、「短期契約や人材派遣を活用することにより新しい労働形態に置き換えることで賃金も下がる」(経済同友会の牛尾治朗特別顧問)。

 全体として、雇用の不安定化、賃金の切り下げを推し進めてきたために、雇用者数が政権発足前の水準と同じでも雇用者所得は十二兆円も少なくなっています。

 政府の今月の月例経済報告は、定期給与が増加傾向で、六―八月のボーナスを含む特別給与は前年を上回っているとしています。

 定期給与は最悪期から少し上向いただけで二〇〇〇年の水準と比べると3―4%落ち込んだ谷底にあります。夏のボーナスは前年より数%増えたようですが、政権発足から昨夏までに一割近く削られた後であり、焼け石に水です。

 上場企業の「損益分岐点比率」が、「人件費など固定費」の削減で過去二十五年で最低の82・9%になったと経済紙が報じています。売上高が八割程度に下がっても利益を確保できるということです。

 大企業は国民へのしわ寄せで収益力を強めています。大企業の収益増と国民の実感が相反するわけです。

■お金の流れの逆転で

 内閣府の調査によると、リストラのめどが付くのに二年以上かかると想定している上場企業は、一九九九年の六割から七割に増加しています。小泉内閣は「構造改革」の名で、さらにリストラを後押しするとともに、所得税・消費税の増税とセットで法人減税を狙っています。

 財界と小泉内閣が進めているのは、無理やり家計から大企業へとお金を回すことです。こうしたお金の流れを逆転させてこそ、景気の自律回復への道筋が見えてきます。


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