2005年10月22日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「自立支援」法案

応益負担は生存権保障に逆行 


 障害者の生存・生活を支えるサービスに一割の自己負担を導入する障害者「自立支援」法案の審議で、尾辻厚生労働相が、「きめ細かな軽減措置をつくって、限りなく応能負担に近づけた」と、繰り返しのべています。

 しかし、部分的な「軽減措置」があっても、全体として大きな負担増になることは明らかです。

■利用を制限することに

 所得に応じて費用を負担する現行の「応能負担」のもとでは、ホームヘルプや通所施設の利用者の95%が無料です。所得保障が不十分で低所得の障害者が多いからです。にもかかわらず、法案は、受けたサービスに応じて一定割合を負担する「定率負担=応益負担」を導入します。

 ホームヘルプを月百二十五時間利用する場合、障害基礎年金一級(月八万三千円)の人は、これまでの無料から一万二千三百円に、自宅から通所施設に通う場合、食費負担も加わり、障害基礎年金二級(月六万六千円)の人でも、無料から一万二千六百円へと負担がふくらみます。通所施設での工賃を上回る負担は、働く権利を奪い、自立を妨げます。

 政府・与党は、所得に応じて負担の月額上限額を設定しているので、「定率負担と応能負担を組み合わせた仕組み」といいます。しかし、「定率負担=応益負担」を基本に上限を設けているにすぎません。

 公明党は、応能負担から定率負担への転換について、「障害者福祉サービスを低所得者に対する保護的な措置から、契約に基づき誰もが利用できるユニバーサル(普遍的な)制度へと発展させるための一環である」と説明しています(公明新聞二十日付)。しかし、現行の障害者の支援費制度は、契約に基づきサービスを利用する制度ですが、応能負担と両立しています。逆に、定率負担による負担増で、サービス利用をがまんせざるをえない事態になることが懸念されます。定率負担への転換は、だれもが利用できるユニバーサルな制度への発展を阻害します。

 障害者にとって、介護や移動などにかかわる各種サービスは、生きていくためになくてはならないものです。経済的な「利益」などとはまったく次元が異なるのに、“利益にみあった費用負担を”という考え方をするのは間違っています。

 低所得者への配慮というなら、ふさわしいのは応能負担です。尾辻厚生労働相の冒頭の発言も、応能負担の合理性を無視できないからです。

 憲法二五条は、国民の生存権保障のため、国に「社会福祉、社会保障」の「向上及び増進」を義務付けています。この立場にたって、すべての障害者に、自立と社会参加に必要なサービスを保障し、負担は所得に応じた「応能負担」にすべきです。

■障害者の声無視するな

 自民党、公明党は会期を一週間残すのみとなった今国会での法案の成立をねらっていますが、障害者・家族らが徹底審議を求め、連日、国会議員に要請しています。地方での行動も盛り上がっています。大阪では、車イスの障害者ら三千人が、市内南北に走る御堂筋の大通りを行進しました。コース距離は阪神タイガースが優勝した場合のパレードのほぼ二倍の四キロ超です。

 「このままの法案では納得できません」と障害者は声をあげています。多くの重要事項が政省令にゆだねられており、必要なサービスが受けられるのかという不安も広がっています。徹底審議が求められており、法案を撤回して再検討すべきです。


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