2005年10月18日(火)「しんぶん赤旗」

憲法改定論には“三つの盲点”がある

日本記者クラブで 不破議長が提起


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日本記者クラブで「憲法九条改定論の三つの盲点」と題して話す不破哲三議長(演台左)=17日

 日本共産党の不破哲三議長は十七日、「憲法」をテーマにした日本記者クラブ主催の研究会で「憲法九条改定論の三つの盲点」と題して報告しました。この研究会は「各党の考えや学識者の主張を聞き、五年、十年の長い間隔で憲法問題をじっくり考える」(事務局)ことを狙いに七月にスタートしたもので、不破氏は第一回の中山太郎衆院憲法特別委員長に続いて二人目です。

 不破氏は冒頭、総選挙後に加速している憲法改定論議をみた場合「重要な問題を議論の外に置いたり、議論の角度に現実離れのところがある」としてそれを三点にわたって提起しました。

 第一の盲点は、九条改定論の多くが「自衛」問題を装って論議していることです。不破氏は、新憲法施行の二年後にアメリカが決定した再軍備と憲法改定の方針書なども紹介しながら、九条改定論が日本を海外での戦争行為に参加させる必要性から起こったことを歴史的に跡付けました。

 さらに、小泉内閣のもとでつくられたテロ特措法(二〇〇一年)やイラク特措法(〇三年)という海外派兵法で日本の「自衛」とは無関係なアメリカの先制攻撃戦略の協力法となっていることを指摘。しかし、これらの海外派兵法も、現状では、「武力による威嚇又は武力の行使に当たる」ことは実施しないという原則を、明記せざるをえません。

 不破氏は、このことを示しながら、この制約を取り外すこと、すなわち、自衛隊を「海外で戦争のできる軍隊」にすることに、憲法改定派の最大のねらいがあると強調しました。

 第二の盲点は、九条改定を推進するタカ派が、軍事偏重の安全保障論に立っていることです。

 不破氏は、今日の世界では、外交こそが安全保障の主役になっており、かつては、世界でも紛争の多い地域だった東南アジアが、いまでは「域内の国のあいだの武力紛争が考えられない」地域となっている実例も紹介。「日本の安全保障の弱点になっているのは、憲法九条でも軍事力の不足でもない。外交力の弱さにこそ、最大の弱点があるという現実を直視すべきだ」と提起しました。

 第三の盲点は、憲法九条を世界がどう見ているか、という問題です。不破氏は、血を流す貢献ができないと「肩身がせまい」という憲法改定派の思い込みを批判しながら、まず、憲法九条こそ、これまで日本にたいする世界の信頼・共感の最大の柱となってきたと述べ、さらに、米のイラク侵略を機に平和の国際ルールへの関心が高まり、九条が戦争を違法化し平和を守る方向を示すものとして注目されているのが、今日の世界の新しい特徴だと指摘。「こうした世界の潮流のなかで憲法問題を考える必要がある」と述べました。

 このあと、不破氏は、総選挙結果、護憲勢力の結集、党名変更、靖国神社問題について質問をうけ、一つひとつ丁寧にこたえました。


■首相の靖国参拝問題で見解

 不破哲三議長は、この講演で、日本外交にアジア戦略がないことを指摘するなかで、この日強行された小泉首相の靖国神社参拝をとりあげ、「日本の外交の前途に非常に危なっかしいものを感じる」と述べました。

 また講演後、「A級戦犯の合祀(ごうし)がなければ、首相の参拝を認めるか」との質問にたいして、「靖国神社は、過去の日本の侵略戦争を『自存自衛』と『アジア解放』の正義の戦争とすることを、自分の立脚点においている特殊な神社であり、仮にA級戦犯の問題がなくても、責任ある政治的立場の人が、戦没者を追悼する場所として、靖国神社を選ぶべきではない」と答えました。


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