2005年10月16日(日)「しんぶん赤旗」
主張
普天間基地「新案」
容認できない県内たらい回し
政府は、普天間基地(沖縄県宜野湾市)に代わるものとして、新たに、米軍基地キャンプ・シュワブ(名護市)内の兵舎地区から海上に延伸する形で長さ千五百メートルの飛行場をつくる案を米側に示しています。
これは、米軍の要求を日本案としたものです。建設先を辺野古沖から沿岸部に移すだけで、県内たらい回しに変わりありません。基地負担の軽減どころか増大があきらかです。容認できるわけがありません。
■卑屈な対米姿勢
普天間基地問題の原点は、宜野湾市民を危険に陥れている現状をなくすことにあります。県民が求めたのは、撤去です。にもかかわらず、政府は、SACO(沖縄にかんする特別行動委員会)合意にもとづき、県内たらい回しに固執し、稲嶺沖縄県知事が条件とした“軍民共用空港化と十五年期限”で建設可能とみて、辺野古沖を閣議決定(一九九九年)しました。県民の意思に反した政府決定は反発を買い、座り込みや作業阻止のための海上行動など長期にわたる粘り強い反対運動によって、断念に追い込まれました。
ところが、米政府は、日本政府のやり方がなまぬるいとばかりに、新たな案を決め、ラムズフェルド国防長官の来日取りやめや、「受け入れないなら普天間は現状維持だ」といってきました。キャンプ・コートニー(うるま市)の第三海兵師団司令部要員など数千人のグアム移転案も、新案受け入れが条件としました。
県民に被害を与える新案を押し付けるのに、のまなければこれまで通り被害を与え続けるというのは、県民を人質にした脅迫です。小泉政権が、アメリカいいなりに新案を受け入れるのは、主権を放棄する卑屈な態度です。
辺野古沖への基地建設自体、許されるものではありません。新案は、場所を陸地に近い浅瀬に移すものですが、これは、辺野古沖案決定にいたる検討のなかで、政府がダメだと結論づけていたものを復活させるとんでもない計画です。
陸地に近い浅瀬に飛行場をつくれば、西側には宜野座村宜野座、松田、東側には名護市瀬嵩、安部などの集落があり、飛行ルートを海側に設定しても、騒音被害も墜落の危険もさけられません。二〇一二年から最新鋭の垂直離着陸機オスプレイの配備もはじまります。同機はテスト飛行のなかで幾度となく墜落したもので、県民に新たな苦痛を与えます。浅瀬にはジュゴンの餌となる藻場が広がっており、そこに構造物が造られれば、「光が当たらず、影響が考えられる」と政府も説明していました。藻が生えなくなって餌がなくなればジュゴンは生息できません。
生活への被害、環境破壊と貴重な生物への悪影響など、どこからみても道理のない計画にたいし、沖縄県民の怒りが高まっています。
■米軍再編ノーを
大野防衛庁長官は、各地の米軍再編は、二月に日米両政府が合意した「共通の戦略目標に沿った日米同盟の変革を支えるため」(十一日参院外交防衛委員会)といいました。共通戦略とは米国の先制攻撃戦争を日米一体でたたかう戦争計画です。日本を、無法な先制攻撃戦争の足場にさせてはなりません。
三十日に沖縄では「辺野古等県内移設に反対する県民総決起大会」が開かれます。米軍再編の大きな焦点である普天間基地問題で、撤去要求を突きつけるとともに、米軍再編―基地強化に反対する全国的な運動をさらに進めていきましょう。