2005年10月14日(金)「しんぶん赤旗」
イラク西部
米軍が攻撃を継続
「憲法投票は困難」と住民
【カイロ=小泉大介】イラク西部では、米軍の大規模な軍事攻撃のため十五日に行われる憲法国民投票への参加が困難になっています。
住民から「われわれを排除するのか」と抗議の声があがっています。
米軍は今月一日以降、カイムとハディサやその周辺で「武装勢力掃討」作戦を行いました。カイムへの攻撃は国際テロ組織アルカイダのメンバー約五十人を殺害して終了したと八日、発表しました。しかし、カイム総合病院の医師ムハンマド・ナジ氏(31)は十二日、本紙の電話取材に対し、「武装ヘリが民家の空爆を続けている」と証言しました。
同病院にはこの十日間で、十八人の遺体と二十人の負傷者が運び込まれ、すべてが女性や子どもを含む民間人でした。これは死傷者のごく一部で、米軍が救急車まで爆撃するため、多くはがれきの下や路上に放置されたままだといいます。
「多数の武装勢力を殺害したなどうそだ。米軍は民間人の死傷者を病院に運ぶことすら妨害している」とナジ氏は怒り、次のように語りました。
「住民のなかで、憲法草案の中身や投票の方法を知っている者はほとんどいない。米軍の攻撃は、われわれを国民投票から排除することを狙ったものだ。ブッシュ米大統領はイラクの民主主義について語っているが、戦車でもたらされる民主主義とは何なのか。民主主義は話し合いの中からしか生まれない」
攻撃にさらされている住民の圧倒的多数は、憲法草案反対が多いイスラム教スンニ派教徒です。
カイムは現在、周辺の町との交通が遮断され、「陸の孤島」。援助物資を受け取ることも不可能です。電気や水道も破壊され、病院は自家発電で持ちこたえているといいます。
カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは十一日、米軍がラマディの市場を爆撃、三人が死亡、十三人が負傷し、攻撃は学校やモスク(イスラム教礼拝所)にもおよんでいると伝えました。
同テレビによると、ハディサでは米軍が武装勢力支援の疑いで病院の医師を六日間にわたって監禁するなど、徹底して住民を拘束しています。
西部一帯では爆撃でユーフラテス川にかかる橋のうち十三が破壊されたため、多くの町が孤立し、住民が食料や水も手に入らない危機的な状態にあります。