2005年10月14日(金)「しんぶん赤旗」
障害者「自立支援」法案 参院委
小池議員の反対討論(大要)
十三日の参院厚労委での障害者「自立支援」法案の採決に先立ち、日本共産党の小池晃参院議員が反対の立場から討論をおこないました。討論の大要は次のとおり。
日本共産党を代表して、障害者「自立支援」法案に対する反対討論を行います。
本法案は、精神を含む三障害の福祉制度の一元化や、在宅サービスにかかる費用の義務的経費化などの前進面もありますが、「財政削減ありき」の政府方針のもとで、障害者と家族に負担の増大を押しつけ、障害者の生活と権利を後退させる重大な問題点があり、断じて認めるわけにはいきません。
■福祉サービス大幅な負担増
反対する第一の理由は、障害福祉サービスに応益負担を導入し、障害者と家族に大幅な負担増を押しつけることです。コミュニケーションも、移動も、地域での生活も「利益」ではなく、「権利」です。大臣は「限りなく応能負担に近い」といいますが、「上限つきの応益負担」と応能負担とは根本的に違うものです。応益負担の導入は、サービスを多く必要とする重度障害者ほど重い負担を強いるもので、障害者の社会参加と自立の支援に逆行するものです。
複雑な減免制度を設け「きめ細かい配慮をした」といいますが、施設入居者の場合、手元に残るのは一カ月二万五千円だけ。グループホーム入居者や自宅から通所施設に通う場合は、手元に生活費が残る保障はなく、多くの場合は赤字になります。わずかな工賃を大幅に上回る利用料負担を押しつけることのどこが自立支援なのでしょうか。明らかな憲法二五条違反です。
担当局長は「サービスは金で買うものだ」と答弁しました。買えない人を国が責任を持って支えることこそ社会保障です。多くの障害者を「買えない経済状態」に置いておきながら、「金で買え」などという態度は、二重に許されません。
■公費医療にも大きな負担増
反対する第二の理由は、精神通院公費、更生医療、育成医療という、公費負担医療制度にも応益負担を導入し、大きな負担増を求めることです。
これは障害者と家族に経済的な打撃を与えるだけでなく、障害者の自立にも逆行します。障害者を医療機関から遠ざけ、必要な医療を受けることを妨げ、健康状態の悪化を招くことになり、命もおびやかす改悪です。それぞれ特性を持っている公費負担医療を一緒くたに定率負担にしてしまうことはあまりに乱暴であり、断じて認められません。
■大事な部分を行政白紙委任
反対する第三の理由は、法案の根幹にかかわる重要事項が政省令事項にゆだねられており、サービス低下の恐れがあることです。昨日、二百十三項目におよぶ政省令・告示事項が示されましたが、本年五月に提示されたものとほとんど変わっておらず、障害程度区分やサービスの報酬額の基準、重度障害者へのサービス基準をはじめ、重要な内容が依然として示されていません。具体的な基準案が明らかにならなければ、これまで受けてきたサービスを引き続き受けることができる保障などありません。大事な部分を行政に白紙委任するようなかたちで法案を通過させることは、立法府の自殺行為だといわねばなりません。
■程度区分判定 実態反映せず
反対する第四の理由は、障害程度区分の判定について、モデル事業の一次判定がほとんど実態を反映しておらず、二次判定での変更率が五割を超えているにもかかわらず、まともな検証もしないまま実施に移そうとしていることです。
大臣は繰り返し「必要なサービスは提供される」といいますが、障害程度区分の認定が適切になされなければ、サービスを受ける入り口で門前払いとなってしまうわけで、制度の根幹にかかわる重大な欠陥であるといわざるを得ません。
■廃案の法案をそのまま提出
くわえて、障害者に年間総額七百億円もの負担増とサービス低下、切り捨てをもたらす法案への懸念が、障害者、家族、関係団体からわき起こり、慎重審議を求める世論と運動が広がっています。
通常国会に提出された法案は、衆参両院の審議のなかで次々に問題点が明らかになるなかで、審議未了、廃案となりました。政府は、廃案となった法案を抜本的に見直し、真に障害者の自立を支援する法案として再提出すべきであったにもかかわらず、施行時期を三カ月遅らせただけで、問題点がまったく解消しないままの法案を特別国会に再提出しました。
しかも、通常国会で衆議院では二カ月にわたり三十八時間の委員会審議と七時間の参考人質疑が行われましたが、今回、当委員会での審議は今日までで十八時間、地方公聴会・参考人質疑もあわせて五時間にすぎません。公聴会や参考人質疑では、与党会派推薦の公述人や参考人の方からも、さまざまな懸念が表明されています。指摘された懸念を解消するため、さらに徹底審議し、真に障害者の自立を前進させる抜本的改善をはかることこそ国会の責務です。
障害者の真の自立支援、全面参加と平等のためには、本法案を撤回し、障害者福祉施策の抜本的な再検討をはかるべきであることを申し上げ、反対討論といたします。