2005年10月13日(木)「しんぶん赤旗」
主張
靖国大阪訴訟
違憲判決の確定と首相の態度
小泉首相の靖国神社参拝は憲法違反だと判断した大阪高裁判決(九月三十日)が、確定することになりました。原告側が、最高裁に上告しない方針を決めたからです。
訴訟は、台湾少数民族の遺族らが、小泉首相の靖国神社参拝によって、思想および良心の自由、信教の自由が侵害されたことへの損害賠償を求めたものでした。大阪高裁判決は、損害賠償は認めなかったものの、小泉首相の靖国神社参拝は「憲法二〇条三項の禁止する宗教的活動に当たる」と認定しました。被告の国側は、損害賠償について「勝訴」しており、それ以上争う意味がないとみなされるので、上告しない方針です。
■立憲政治の否定にも
原告側弁護団は、「違憲判決が残ることで、小泉首相に対する強い警告にもなる」とのべていますが、問題は、小泉首相の態度です。
大阪高裁判決が出た際、小泉首相は、国会答弁で「憲法違反とは思っていない。一国民として参拝するのがどうして憲法違反なのか理解に苦しむ」「まだ最高裁(の判断)ではない」とのべています。首相官邸での記者会見で、「首相の判断に影響を与えますか」と問われ、「ないですね」とも答えています。
高等裁判所が首相の行為について重要な憲法判断を行っているのに、当事者である首相がそれを無視して従わない態度をとるのは、憲法を無視するに等しく、立憲政治の否定にもつながる重大な問題です。
高裁の確定判決となるのですから、「まだ最高裁ではない」からという逃げ口上は通用しません。小泉首相は、判決を正面から受け止め、靖国神社参拝をやめるべきです。
「一国民として参拝するのがどうして憲法違反なのか理解に苦しむ」と小泉首相はいいますが、大阪高裁判決は、「私的参拝」論がなりたたないことを、次のように、明快にのべています。
公用車を使い、総理秘書官を伴い、「内閣総理大臣 小泉純一郎」と記帳した「態様」。総理就任前の「公約の実行」であり、参拝前後の発言でも「私的」とは明言せず、「公的な立場での参拝であることを否定していない」。「参拝の主たる動機や目的が政治的なものである」。以上を総合すると「内閣総理大臣としての『職務を行うについて』なされたもの」と認められる。
靖国神社参拝は、「極めて宗教的意義の深い行為」であり、「公的性格を有する」参拝を三度も繰り返したことは、「特定の宗教への関心を呼び起こ」し、「助長、促進」になった。これによって「国と靖国神社とのかかわり合い」は、「相当とされる限度を超えるもの」になった。
大阪高裁判決は、こうした根拠を示して、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」(憲法第二〇条三項)に違反していることを、ていねいに論証しています。素直に読めば、理解に苦しむことはありません。
■侵略正当化の「助長」
靖国神社は、かつて、国民を戦争に動員する役割を果たし、戦後も、日本の行った戦争は「正しい」戦争だったと宣伝するセンターになっています。一宗教法人にとどまらず、侵略戦争の美化・正当化という特定の政治目的をもった運動体でもあります。
小泉首相の靖国神社参拝は、特定の宗教を「助長、促進」すると同時に、侵略戦争の美化・正当化を「助長、促進」するものです。こんな誤りを繰り返すべきではありません。