2005年10月10日(月)「しんぶん赤旗」

職員配置・報酬わからない

施設側“困った”

障害者「自立支援」法案

サービスの抑制にも


 参議院で審議中の障害者「自立支援」法案に、障害者施設やホームの現場で困惑と怒りが広がっています。利用者に一律の応益負担を課すだけでなく、職員配置基準や報酬がどうなるのか、施設にとって運営にかかわる重要な部分さえ具体的に明示されていないのです。(藤川 良太)


 「仲間(障害者)は絶対に守る。でもどうしたらいいのか、見通しがまったく立たない」。埼玉・東松山市にある知的障害者の施設あかつき園の太田衛(まもる)施設長は、厚生労働省が出した同法に関する資料を前に、大きくため息をつきました。

◎  ◎

 あかつき園は、入所部五十六人、通所部十四人、分場部十五人の「仲間」がいます。日中は、障害や本人の意向に合わせて、農業やクッキーづくり、リサイクル活動、施設内の掃除などの「仕事」を、四グループに分かれて行っています。

 「自立支援」法案では、障害者を、障害程度区分で「要介護5」から「要支援」の六段階に分けます。それにそって、施設などの利用計画が作成され、公費の支給額が決定します。仲間の障害の度合いは、さまざま。基準がはっきりしないため、どの人がどの障害区分に該当するか分かりません。太田さんは「いままでも、外で働けるようになりたい人はそうしてきた。最低でも、仲間みんなの願いや要求が実現できる形にしないといけない」。

 厚労省資料によると、「自立支援」法案で、国の給付で施設が行えるのは、生活介護と自立訓練、就労移行支援、就労継続支援の四つの事業。それぞれ、入浴や排せつの介護から、リハビリ、就労支援まで、事業によって受けられるサービスが異なります。

◎  ◎

 あかつき園で行われている「仕事」はどの事業に当たるのか、障害程度区分による支給はどう変わるのかも、法案では分かりません。

 太田さんは「もし、一事業にそれぞれ職員が必要だと、施設は多くの職員を抱えることになる」。あかつき園では、精神障害を併発している仲間もいます。併発している場合、その日に作業に行くのか行かないのかは、朝の調子で決まることもあるといいます。法案では、施設の報酬は月払いから日払いに変わります。当日、計画していた利用がとりやめになったとき、報酬が払われず職員は余剰となり、施設に大きな打撃を与える可能性もあります。

 「資金が無く余剰人員を抱えられない施設はつぶれてもいいと言うのか」と怒る太田さん。

 「『自立支援』法案は応益負担を仲間に押し付け、本人の意向とは別に障害程度区分で選択できるサービスを限定する。あかつき園の場合、一定の障害以下で普通に受けられるサービスは就労訓練だけで、障害者は一生訓練しろといわんばかり。サービスの抑制につながりかねない。中身もはっきりさせないままでの成立には反対です」


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