2005年10月10日(月)「しんぶん赤旗」
「人間の盾」は野蛮
最高裁、イスラエル軍に禁じる
パレスチナ人に爆発物捜査強制
前へ立たせ弾よけに
【カイロ=小泉大介】イスラエル軍がパレスチナ「過激派」メンバーの逮捕・掃討作戦の際にパレスチナ人を「人間の盾」として利用している問題で、イスラエル最高裁は六日、国際法に違反するとして禁止する裁定を下しました。同軍の行動に内外の厳しい目が向けられています。
パレスチナ人を「人間の盾」に使うのは、二〇〇〇年九月末のイスラエル・パレスチナ衝突ぼっ発後に始まったとされます。その代表例は、イスラエル軍が過激派容疑者宅を捜索する際、近隣のパレスチナ人を強制的に動員してドアをたたかせ、容疑者をおびき出すというもの。
イスラエルの人権団体ビツェレムによれば、▽パレスチナ人を容疑者宅に入れ爆発物などがないか調べさせる▽パレスチナ人を容疑者宅の内部や兵士の前に立たせ過激派が攻撃できないようにし、時には兵士がパレスチナ人の肩越しに銃を構え発砲する▽パレスチナ人に路上の不審物を排除させる―ことまで強制しています。
〇二年八月には、十九歳のパレスチナ人学生が「盾」とされ、過激派とイスラエル軍の銃撃戦に巻き込まれ死亡しました。これまでに多数のパレスチナ人、特に若者が犠牲となっています。
今回の最高裁裁定は、〇二年五月にイスラエルとパレスチナの七つの人権・平和団体が禁止を請願したことを受けたもの。裁定文は、「軍は民間人を人間の盾として利用する権利を保持していない。それは冷酷で野蛮なものだ」と断じました。
パレスチナ人は「自発的に盾となっている」とのイスラエル軍の主張に対しても、「百の事例のうち九十九は自由な意思などではない」としました。
最高裁裁定をうけ、軍指導部は現場の兵士にこれを履行するよう声明しましたが、政治レベルではさまざまな反応が出ています。左派政党メレツのギャロン議員は「最高裁は、民主国家の軍隊はテロ集団のような行為をしてはならないと裁定した」と評価。一方、右派の国家宗教党のエイタム議員は「兵士をいっそう危険にさらす」と非難しました。
ビツェレムは今回の裁定に関し声明を発表。「真に試されているのは、軍がこれを履行するかどうかである。〇三年七月に最高裁が、パレスチナ人を動員できるのは自発的な場合に限ると暫定的に決定した後も、軍は違反してきた。イスラエル軍は前線の兵士に対し、民間人を利用することは絶対禁止されていることを確実に伝えるべきだ」と強調しました。