2005年10月10日(月)「しんぶん赤旗」
主張
障害者「自立支援」法案
ふたたび廃案へ力あわせよう
小泉内閣が国会に再提出している障害者「自立支援」法案にたいし、障害者・家族は、「このままの法案では自立できない」と慎重審議を求めています。
■自立妨げる利用料負担
障害者のサービスと医療に、一割負担と食費負担を導入し、障害が重いほど大きな負担となる仕組みです。尾辻厚生労働相でさえ、「障害者のみなさんが一割負担を心配したから」廃案になったと、国会で答弁せざるをえませんでした。
その骨格にまったく手を加えないまま再提出し、「一刻も早い成立が必要」(小泉首相)と審議を急ぐのは道理がありません。障害者の「私たちの声を聞いてほしい」という願いに背くものです。
一割の自己負担導入は、障害者の自立を妨げます。日本共産党の志位和夫委員長は衆院本会議代表質問で、小池晃政策委員長は参院予算委員会で、障害者が働く場とする通所施設(作業所、授産施設など)の実態をとりあげました。
通所施設での障害者の負担は、現行の「95%の人が無料」から、一割負担と食費負担をあわせ月額二万九千二百円(課税世帯)に上がります。小泉首相は、「収入以上の負担は求めていない」といいますが、工賃(平均で月額七千三百円)の約四倍です。
「低所得者に配慮している」といいますが、たとえ減免(社会福祉法人減免)されても、月一万二千六百円の負担です。
懸命に働いて手にするわずかな工賃をはるかに上回る利用料を取り立てることは、“働かないで、家でじっとしていなさい”というのと同じです。
重い自己負担で、働く場と生きがいを奪っておいて、「自立支援」をうたうのは、障害者をあざむくものです。
自民党や公明党は、法案の早期成立をねらう一方で、軽減措置を「わかりやすく宣伝」するよう求めています。障害者が負担軽減の措置を知れば、反発を抑えることができるといわんばかりです。
しかし、たとえ「きめ細かな配慮」をしても、過酷な負担となることに変わりありません。
たとえば、十八歳未満の心臓手術のさいの医療費の自己負担増です。公明党は同党議員の質問で「障害児 医療負担さらに軽減」と宣伝しましたが(公明新聞十月七日付)、大幅負担増を多少軽減したにすぎず、食費を含めた負担は、現行の四倍に上がります。
小泉首相は、“増大するサービス利用のもとで、必要なサービスを確保するためには、その費用について、利用者の方々を含め、皆で支えあう必要がある”とのべました。
いまでも障害者サービスの費用は“国民みんな”で支えています。それをいまさら強調するのは、利用者である障害者に負担増を押し付けるためです。
■サービスの低下も
一割負担の導入が、必要なサービスの確保につながるかのようにみせているのも、ごまかしです。実際、尾辻厚生労働相は、自治体間格差の是正をはかるために「サービスが下がるところがあるかもしれない」とのべています。
障害者の切実な願いである所得保障の拡充も政府は否定しています。
障害者は、高齢社会のもとで増え続けています。障害者の自立を妨げ、生きる権利を奪う法案の、再度の廃案をめざし、国民みんなで力をあわせましょう。