2005年10月9日(日)「しんぶん赤旗」
イラク和解
アラブ連盟が動く
会議提唱、事務局長派遣へ
【カイロ=小泉大介】アラブ連盟(二十一カ国とパレスチナ自治政府が加盟、本部カイロ)がイラクの混乱の終結、宗派・民族間の対立の解消めざして動きだしています。同連盟後援による国民和解会議の開催を提唱し、ムーサ事務局長が早期にイラクを訪問することを決定。ヘリ事務局長補佐官を代表とする先遣隊が近日中に五日間の日程でイラク入りします。
アラブ連盟のイラク支援本格化の第一歩は、今月二日にサウジアラビアのジッダで開催された会議でした。会議には、同連盟が九月に設けたイラク問題閣僚委員会メンバーであるバーレーン、エジプト、ヨルダン、シリア、サウジアラビア、イラクの外相と、連盟議長国アルジェリア外相が参加。十五日の国民投票にかけられるイラク憲法草案への意見や、それとも関連した同国の内戦化への懸念が各国から出されたとされます。
会議後に記者会見したサウジのサウド外相は、「われわれが望むのは、統一し安定したイラクだ」と発言。「イラク国民和解会議開催準備のため、ムーサ事務局長をできるだけ早く派遣する」と表明しました。ムーサ事務局長は「私の訪問は、北から南、東から西へと、イラク全土をカバーするものとなるだろう」とし、多数の宗教・宗派、民族の代表らと話し合う決意を示しました。
動きだしたアラブ連盟のイラク支援ですが、大きな問題もはらんでいます。第一は極度に悪化した現地の治安状況です。ムーサ事務局長は先遣隊メンバーに対し、いずれの勢力にも肩入れせずに話を聞くことに徹するよう指示しました。事務局長のイラク訪問が憲法国民投票の前になるか後になるのかも不明です。
アラブ連盟後援の和解会議開催へのイラク側の姿勢も、必ずしも積極的ではありません。イラクは一九四五年にアラブ連盟が七カ国で発足した時以来のメンバー。しかし、現イラク移行政府の中心となっているイスラム教シーア派、クルド人勢力と連盟の関係は良好とはいえません。
九月二十八日に暫定国民議会が原則合意したイラク憲法草案は、イラクの性格に関し、「イラクはイスラム世界の部分である。そのうちのアラブ人がアラブ国家の部分である」と規定しました。
これに対しアラブ連盟や国内のイスラム教スンニ派勢力は、アラブ国家としての性格をあいまいにするものだと反発。その後、最終草案で「イラクはイスラム世界の部分である。そしてイラクはアラブ連盟の創設、中心メンバーであり、その憲章を守る」と変更されました。
シーア派首班のイラク政府は非アラブでシーア派を国教とする隣国イランとの関係強化を進めています。サウジアラビアなど一部アラブ国はこれに警戒感を示しているともいわれます。